- 2021年11月18日
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- トピック:気候変動と人権
© Pierrot Men/Amnesty Internationa
2021年10月8日、国連人権理事会はようやく、きれいで健全かつ持続可能な環境で暮らす権利を認める決議を採択しました。健全な環境を享受する権利は、地球温暖化による被害を受け、環境破壊の中で生活する人たちの間では長い間、認識されてきましたが、今まで明確に示されていませんでした。
それが今回、コスタリカ、モルディブ、モロッコ、スロベニア、スイスから提出された提案が、賛成43カ国、反対0、棄権4カ国(中国、インド、日本、ロシア)で採択されました。
この決議には法的拘束力はありませんが、国連の人権と環境に関する特別報告者であるデビッド・ボイド氏が「地球環境の危機が年々より多くの死者を出している世界において、この決議により人生が一変する可能性がある」と述べる通り、世界各地で災害が深刻化する中、環境悪化との闘いに希望をもたらす画期的な判断であることは間違いありません。
環境問題と人権:これまでの動き
これまでの献身的かつ情熱的で信念を持った草の根運動が今回の決定を後押ししたことは間違いありませんが、2010年代に入ってからは、国際的な法的手段の場で、環境問題は人権問題であるという議論が展開されてきました。
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キリバスの家族が「気候難民」として難民申請
太平洋中部に位置するキリバスは、海面上昇による水没の危機にさらされている国の1つで、そこに10万人以上が暮らしています。イオアネ・テイティオタさんとその家族は、環境の悪化による作物の不作と人口の過密のために島に居住できなくなったと主張し、2013年にニュージーランドへ移住、難民申請をしましたが、認められませんでした。その後、国連人権理事会に申し立てを行うも、2020年に申請を却下されました。
ティティオタさんの申請は却下されたものの、国連は気候変動に起因する難民申請自体は認め、この事例は、環境に起因する人権侵害からの保護を将来的に主張する道を開きました。
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オランダ最高裁の歴史に残る判決
環境と人権の関係は、2019年にオランダ最高裁判所が出した判決によりさらに強調されました。最高裁はオランダ政府に対し、2020年末までに温室効果ガス排出量を1990年レベルから25%削減するよう命じました。
これは、オランダのNGO・市民が17%としていた削減目標を引き上げるよう政府に対して求めた訴訟に対する判決で、判決は「この目標を達成できないのは、欧州人権条約でのオランダの責任の放棄である」と指摘していました。
環境破壊と人権侵害の関係を明確に宣言した今回の国連人権理事会の決議は、こうした司法判断の変化が反映されたものです。
気温上昇、それに伴う沿岸部の洪水、干ばつ、飢饉、異常気象は、今後何世代にもわたって多くの人たちの生活、希望、未来に永続的かつ壊滅的な足跡を残すことになるでしょう。
その結果として現れる病気、災害、悲劇、そして損失は、生存権、十分な食料、水、住居と衣服、健康(精神的および肉体的の両方)、そして保護を求める権利に影響を及ぼします。
これらすべての権利は、世界人権宣言(1948年)、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(1966年)、子どもの権利条約(1989年)、難民の地位に関する条約(1951年)および1967年の難民議定書を含む多数の国際条約および協定に謳われています。
ある権利が法的に認められる、あるいは表面的に権利だと認識されても、それは富や権力、特権を持つ者からの、持たざる者たちへの象徴としての消極的な承認にすぎません。
私たちが直面している気候と生物多様性の危機の最悪の結果を回避するための具体的な解決策は、議会や委員会の命令だけで決まるものではありません。
立法措置は有意義な解決策の一部ではありますが、解決には意味のある行動を起こさなければならないのです。
署名にご協力ください!