- 2025年4月 9日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:死刑廃止
- イラン、イラク、サウジアラビアの3カ国で世界の死刑執行数の91%
- 抗議者や少数民族に対して、死刑を抑圧の道具にする国家
- 薬物関連の死刑執行が増加
アムネスティは、2024年の世界の死刑状況について調査結果をまとめた。2024年は15カ国で1,500人以上が処刑された。これは1,634件だった2015年以降、最多の死刑執行数だ。2024年の死刑執行数は1,518件で、その大半は中東で執行されたものである。一方で死刑を執行した国の数は、2年連続で過去最低となった。
この数には、世界で最も多くの死刑を執行している中国、および北朝鮮やベトナムなど、死刑を広範に適用していると考えられる国で処刑されたとみられる数千人は含まれていない。また、パレスチナとシリアに関しても、現在も継続中の危機により数値を確認できなかった。
執行数の増加は、主にイラン、イラク、サウジアラビアで執行数が急増したことによる。この3カ国だけで1,380件に上る。イラクではほぼ4倍(少なくとも16件から少なくとも63件)に増加し、サウジアラビアでは2倍(172件から少なくとも345件)に増加した。イランでは昨年よりも119件増え(少なくとも853件から少なくとも972件)、その数は世界総数の64%を占める。
死刑は、今日の社会では受け入れがたい犯罪だ。数千件の死刑を執行したとみられる一部の国々では、依然として秘密主義により監視の目を逃れているが、死刑制度を存置する国家は少数派であることは明らかだ。2024年に死刑を執行した国はわずか15カ国と2年連続で過去最低となり、残酷で非人間的で品位を傷つけるこの刑罰からの決別に世界が向かっていることを示す。
2024年の死刑執行件数が最も多かった上位5カ国は、中国、イラン、サウジアラビア、イラク、イエメンだ。
死刑を「武器化」する当局
2024年を通して、アムネスティは、治安の改善を口実に、あるいは恐怖心を植えつけるために、指導者たちが死刑を武器として使っているのを目の当たりにした。新型コロナウイルス感染症大流行の収束後、死刑執行数が着実に増加している米国では、25人が処刑された(2023年は24人)。次期トランプ大統領は、「暴力的な強かん犯、殺人犯、モンスター」から国民を守る手段としての死刑を繰り返し口にした。犯罪者を人間扱いしないこうした発言は、死刑には犯罪に対する独自の抑止効果があるという誤った考え方を助長した。
中東地域のいくつかの国では、死刑判決が人権擁護者、反体制派、抗議者、政敵、少数民族の声を封じるために用いられている。特にイランとサウジアラビアでは顕著だった。
イランは、「女性・命・自由」運動でイスラム共和国体制に異議を唱えた個人を罰するために、引き続き死刑を適用した。不当な裁判と拷問による「自白」でこの運動に関連して2人が処刑されたが、うち1人は精神障がいのある若者だった。
サウジアラビア当局は、政治的反対意見を封じるため、そして2011年から2013年にかけて「反政府」デモを支持した少数派のシーア派を罰するため、死刑を武器として使い続けた。
コンゴ民主共和国は死刑執行を再開する意向を表明し、ブルキナファソの軍当局は通常の犯罪に対する死刑を復活させる計画を発表した。
薬物関連犯罪への死刑執行の増加
2024年の死刑執行の40%以上は、薬物関連犯罪に対するものだった。国際人権法および基準では、「最も重大な犯罪」に対してのみ死刑を制限的に適用すべきとされており、薬物関連犯罪に死刑を科すことは、これに反する。
薬物関連の処刑は中国、イラン、サウジアラビア、シンガポールで広く行われており、おそらくベトナムでも同様とみられる。多くの場合、薬物関連の犯罪で死刑判決を受けるのは、社会的弱者に偏っている。
一方、死刑が麻薬取引の減少につながるかどうかは立証されていない。モルディブ、ナイジェリア、トンガなど、薬物関連犯罪に死刑の適用を検討している国は、効果のない違法な解決策に頼ろうとするのではなく、麻薬対策の中心に人権を据えるべきだ。
死刑廃止を求める声の力
死刑執行数の増加にもかかわらず、死刑を執行したことが確認された国はわずか15カ国であり、これは2年連続で過去最低の数字である。現在、113カ国が死刑を全廃しており、法律上または事実上死刑を廃止している国は合わせて145カ国に上る。
2024年には、ジンバブエが通常の犯罪に対する死刑を廃止する法案が成立した。国連総会では加盟国の3分の2以上が、死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議案に賛成票を投じた。マレーシアでは死刑制度改革により、死刑を宣告されていた1,000人以上が減刑を受けた。
日本では死刑を宣告されていた袴田巖さんが、約50年の時を経た2024年9月、無罪となった。死刑廃止に向けたこうした動きは2025年も続いている。3月には、手続きに重大な欠陥があったにもかかわらず米国アラバマ州で死刑を宣告された黒人男性、ロッキー・マイヤーズさんに恩赦が認められた。家族や弁護団、元陪審員、地元の活動家、国際社会からの働きかけによるものだった。
死刑廃止に向け優先的に動けば効果はもたらされる。一部の指導者が頑なに死刑を武器化しようとしているが、世界が死刑から解放されるのは時間の問題である。
アムネスティ国際ニュース
2025年4月8日