- 2025年4月 1日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ミャンマー
- トピック:
国軍は、先週発生したマグニチュード7.7の地震の被災地において、民間人を標的とした空爆を行っている。軍は攻撃をやめ、支援が迅速に被災者に届くようにすべきだ。
地震発生後の数日間にアムネスティが収集した証言は、軍が容赦ない空爆を継続しているという報道を裏付ける。2021年のクーデター以来、ミャンマーでは空爆が日常茶飯事となっているが、被災地への攻撃は救援活動や復興を妨げ、生存者の恐怖と不安を増大させている。
援助を求める一方で、爆撃を行うなどありえない。地震の被災地と同じ地域で空爆を行い、民間人を攻撃することは非人道的であり、明らかな人権無視だ。ミャンマー国軍は、救援活動に関わるすべての関係者とともに、人権の諸原則を守り、生存者の人道ニーズを最優先しなければならない。
国軍配下のメディアによると、地震による死者は少なくとも2,065人に上り、負傷者は3,900人を超える。犠牲者の数は日を追うごとに急増しており、被災地とのやりとりができない情報伝達や報道規制の問題と相まって、犠牲者数はさらに多いことが懸念される。地震の震源地はミャンマー中部の広大な地域ザガインで、ミャンマー第2の都市マンダレー、首都ネピドー、シャン州とバゴー地域の一部でも大きな被害が報告されている。
チェーンソーのような轟音
クーデター以来、国軍はザガインをはじめとするミャンマー中部で武装抵抗勢力と激しい戦闘を繰り広げ、違法な空爆や超法規的処刑、大規模な家屋の焼き討ちを行ってきた。抵抗勢力による人権侵害が疑われる事例もある。
アムネスティは、ザガイン管区チャウンウー郡区にある村の看護師と救助活動従事者に話を聞いた。救援活動従事者は「地震発生後の攻撃から身を隠していた。攻撃は地震発生当日に1回、4月1日の朝に数回あった」と語った。攻撃はパラモーター(エンジンを背負って飛ぶパラグライダー)を使って行われたという。パラモーターによる攻撃はミャンマー中部で投入された新しい戦術で、ジェット燃料のような資源をあまり必要としない。
「地下シェルターにいたが、パラモーター攻撃の最中、エンジン音が村の上空を通過するのが聞こえた。パラモーター攻撃の音はまるでチェーンソーのようだ。空爆を生き延びることが、日常になってしまっている。なぜまだ続いているのか」
抗議活動や不買運動を通じて軍に反対する市民的不服従運動に参加している看護師は、地震のあった夜にも、3月31日にも、パラモーターによる攻撃があったと語った。早期警報システムが確立されたこともあり、今はパラモーターによる攻撃による死者は出ていない。
「精神的に参っている。村ではみんなは、攻撃と地震に怯えている」
2021年のクーデター後に国軍と戦うために創設された人民防衛隊を監督する国民統一政府は、3月30日より2週間の停戦を発表した。4月1日には別の武装勢力が、防衛行動を除いた1か月の人道的停戦を発表した。
新型コロナウイルス感染拡大の時のような状況
これまでの自然災害時とは異なり、国軍は国際社会に異例の支援要請を行った。アムネスティは一部の被災地に支援物資が届き始めているとの情報を入手したが、配送が妨害されているという報告もある。インターネットも遮断されているという。
アムネスティはザガイン管区の行政中心地であるザガインの町の住民3人から話を聞いた。ミャンマーの市民団体による支援活動の報告書も確認した。同町をほぼ支配している軍が、マンダレーからザガインに向かう小型車両に対して「厳格な監視」を行っているという。兵士が搬入物資を検査しており、ザガインの他の地域から来た者で抵抗勢力とのつながりが深い場合は、検査にさらに時間がかかっているようだ。
住民によると、町のほとんどが被害を受け、飲料水、食料、避難所、医薬品、適切な医療、電気に事欠く。人びとは路上でマットや防水シート、蚊帳を使って寝ているという。小型のソーラーパネルで電気をまかっている人もいる。
「ミャンマー赤十字社はここザガインにある。ここを拠点とする地元の市民団体も活動しており、機能している。しかし、国際的な団体が町に入ってくるのを見たことがない。町には業者がいないため、食料や飲料水を購入することもできない」
支援物資の配給を手伝っていた別の住民は、缶詰やインスタント麺などの乾物が必要だと言い、地元の団体は独自の装備で捜索・救助活動を行っていると話す。
国際機関はザガインへの支援物資の配送を許可されたと伝えられていたが、アムネスティが3月31日時点で話を聞いた人びとは、町でこうした機関を目撃した者はいなかった。
妊婦が地震後の地元の病院での恐ろしい光景を語った。「病院(ザガイン総合病院)の状況はまるで新型コロナウイルスの時のようだった。病院内には大量の遺体が放置されていて、誰なのかもわからない状態だった。病院は遺体を火葬場に運び込むだけだった」
帝王切開が必要な女性は手術のためにマンダレーに行かないとならなかったが、行くことができない。
人権は、危機的状況や緊急事態において最も脅かされる。国軍をはじめとする紛争当事者は、影響を受けたすべての人びとに必要不可欠なニーズに迅速に対応し、救援活動が差別なく実施されるよう保証すべきだ。飲料水、食料、医療品などの国際支援や財政支援は、最も弱い立場にある、あるいは社会から疎外された集団に優先的に提供しなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2025年4月1日
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