- 2025年3月20日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シリア
- トピック:地域紛争
シリア海岸地域で民間人数百人が殺害され、その大半がイスラム教少数派のアラウィー派の人たちだという。
当局は速やかに行動を起こし、紛争地域の民間人の安全を確保し、違法な殺害を含む人権侵害の阻止に向け、迅速に行動しなければならない。断固とした行動、第三者による公正で実効性ある調査、その上での加害者の裁きが求められている。これらの対応が取られなければ、殺人を犯しても罪に問われないという風潮がはびこることになる。
シリア政府には、国際人道法が定める義務に加え、国内で暮らすすべての人の人権を保護する義務がある。当局は、すべてのシリア人の権利を擁護し、いかなる場合も、個人や団体がその政治的立場で批判や攻撃を受けるようなことがあってはならない。
路上に横たわる死体、愛する人の死を前に悲しみに打ちひしがれる家族の光景は、これまで繰り返されてきた残虐行為を思い起こさせるだけでなく、宗派間の緊張を高め、新たな暴力を引き起こすおそれがある。シリア人は、正義と尊厳に根ざした未来を享受して当然であるにもかかわらず、想像を絶する喪失の事態に再び直面している。
政府は、第三者による事実関係を調査する委員会の設置と容疑者の公正な裁判を確約しているが、透明性の確保と国際基準に基づく対応が問われている。委員会は、報告書を30日以内に大統領府に提出するよう命じられているが、調査結果は公表されなければならない。調査に透明性がなければ、被害者も一般市民も、調査内容を信頼することができない。
アフマド・アル=シャラア大統領は、加害者を「厳格かつ容赦なく」裁くと約束しているが、被害者の証言や意見、思いに耳を傾け、人びとの権利を守り、加害者が誰であっても公平に裁かれなければならない。
政府主導の調査に加え、当局は国内外の独立した調査員を受け入れ、彼らが独自に調査できるようにすべきだ。
今回の一連の出来事の中での重大な人権侵害の被害者に対し、真実、正義、補償を果たす上で、当局の包括的な対策が早急に必要であることがあらためて浮き彫りになった。真実、正義、補償の実現は、被害者への救済とともに、同様の事件の再発防止を徹底することを意味する。
背景情報
何十年もシリアを支配してきたアサド家は、同国で少数派のアラウィー派に属する。
昨年11月、ハイアト・タハリール・アル・シャーム(HTS)と反体制派武装勢力が軍事攻撃を開始し、アレッポ県を制圧した。さらに、12月8日までにダマスカスを掌握し、バシャール・アル・アサド大統領は国外に脱出した。
今年1月29日、シリア軍事作戦総司令部は、HTSの元代表アフマド・アル=シャラアを暫定的に国家元首に任命した。同日、暫定政権は、すべての軍事派閥を解散し、国家機関への統合を発表した。
3月6日、アサド前政権に忠誠を誓う武装集団が国家治安部隊を攻撃した。これに対し当局は、政府寄りの武装勢力の支援を受けて反撃に出た。
地元の情報筋によると、紛争は複数の行政区に拡大した。シリア人権監視団によると、3月10日までに民間人973人以上が殺害され、その大半がアラウィー派だった。
国際人道法は、紛争に関与するすべての陣営に適用される。アフマド・アル=シャラア現政権も、シリアのすべての人びとに対する国際人権法が定める義務を負っている。
アムネスティ国際ニュース
2025年3月10日
英語のニュースを読む
関連ニュースリリース
- 2024年12月17日 [国際事務局発表ニュース]
シリア:アサド政権下の人権侵害を正す歴史的な機会 - 2024年5月10日 [国際事務局発表ニュース]
シリア:「イスラム国」敗北後に拘束された人たち 拷問・虐待にさらされる - 2023年2月 6日 [国際事務局発表ニュース]
シリア:政府はクルド人多数地域の包囲網の解除を - 2022年4月 8日 [国際事務局発表ニュース]
シリア:長年の人権侵害を闇に葬る拷問禁止法 - 2022年2月10日 [国際事務局発表ニュース]
シリア:クルド警察組織がキャンプで発砲 子ども1人死亡