ロシア連邦:ウクライナ人捕虜への虐待 戦争犯罪と人道に対する罪

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2025年3月14日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ロシア連邦
トピック:

ロシア当局は、拘束したウクライナ人の戦闘員や民間人に対し、拷問や隔離拘禁、強制失踪などの非人道的扱いを繰り返してきた。一連の対応は、戦争犯罪や人道に対する罪にあたる。

アムネスティは、2022年2月以降、ロシアに捕えられたウクライナ人捕虜や民間人に対する扱いに調査報告書を発表し、その多くが数年にわたり外部との連絡を断たれていることを明らかにした。拘禁場所が明らかにされない中、拷問や虐待、さらには殺害などの事態が続いているが、まったく責任を問われていない。

ロシアによるウクライナ人の捕虜や強制移送された民間人の隔離拘禁は、彼らを人間扱いせず沈黙させることを意図したものだが、安否を気にかける家族にとっては、地獄のような日々が続いている。

拷問は外部から完全に隔離された状態で行われ、被害者が生き延びれるかは拘束者の手に委ねられる。今回のロシアの対応は、単なる個別的な問題ではなく、組織的、意図的に行われており、国際法のあらゆる原則に違反する。

アムネスティは、2024年1月から11月にかけてウクライナ人104人に聞き取りをした。その内訳は、捕虜だった人5人、捕虜の家族38人、「特別な状況で行方不明」になった23人の人たちの家族、かつて拘束されていた民間人とその家族28人、そして現在ウクライナでロシアによって拘禁されている捕虜10人だ。

情報の遮断

軍人と民間人あわせて数千人のウクライナ人が、ロシアとウクライナのロシア占領地域で拘束されているとみられる。

戦争捕虜の大多数は外部との連絡を断たれ、家族には、娘や息子あるいは親が生きているのか、どこでどうしているかなどの情報はほとんど届かない。

ロシア当局は国際機関の接触を阻止する狙いで、国際法の保護外に捕虜を置く対応を取っている。そのような状況での長期の隔離拘禁は、非人道的な扱いに相当する可能性がある。

夫がロシアに拘束されたオレナ・コレスニクさんは、アムネスティにこう語る。「夫が昨年7月に捕らえられてから、わずかな情報しか届かず、どこにいるかを知ることはできず、どこに手紙を書けばいいかさえもわからない。もうどうしていいのかわからない」。

行方不明者

ウクライナ当局によると、「特殊な状況での行方不明者」は数万人に及び、その多くはロシアに拘束されたか殺害された可能性が高いという。いくつかの事例では、ロシアが特定の捕虜の拘束を国際法に従う形でICRCに通知していたこともあった。しかし、数百人あるいは数千人の捕虜については、ICRCに通知していない可能性がある。

フリスティナ・マカルチュクさんの夫、ヴォロディミルさんはロシアのテレビ番組に出演し、自身が捕虜になった経緯を説明した。しかし、ロシアはヴォロディミルさんの拘束を認めていない。ロシアが彼の拘束を認めていないのは強制失踪に等しい。

強制失踪の対象になっていると思われる人たちの多くが民間人だ。ロシアは長い間、恣意的な逮捕、拷問、強制失踪という圧力を加えることで、支配地域の住民を支配する体制を取ってきた。こうした行為は人道に対する罪に相当する。

拷問と治療の拒否

アムネスティの調査で、ロシアに拘束された人たちに対し、暴行や医療拒否などが行われていたことが明らかになっている。

2年以上もロシアに拘束されていた元捕虜、ヴォロディミル・シェフチェンコさんは、こう話す。「ロシア当局の拷問はすぐ始まった。スタンガンや棒で殴られた。激痛が走った。また、同じように拷問を受けた人たちが目の前で死んでいく様子も目の当たりした。もうどうしようもなかった状況だったと思う」。

捕虜になる前に大きな負傷を負った元ウクライナ兵捕虜の一人は、「その場限りの消毒薬を塗布されただけで、治るか死ぬか、気にもされなかった」と語った。

戦争法違反

ロシアの行為は、捕虜に定期的な手紙のやり取りや医療を受ける権利、国際的機関の訪問を保障するジュネーブ条約に明らかにに違反する。

アムネスティはロシアに対し、拘束したウクライナ人に対する拷問、強制失踪、隔離拘禁などの措置を即刻停止するよう求める。また、ロシアは、すべての捕虜が置かれている状況を関係当局に通知するとともに、国際人道団体による捕虜への自由な接触を認める必要がある。その上で、混成医療委員会を設置するなどして、すべてのウクライナ人捕虜に適切な医療の提供や必要な対応を取らなければならない。不法に拘束されている民間人の解放も当然である。

国際社会はこれらの国際法が定める凶悪な犯罪を阻止し、加害者の責任を問うために、普遍的管轄権などによる手段をロシアに行使すべきだ。そうでなければ、ウクライナの戦争捕虜、民間人、さらにその家族の苦悩は深刻になるばかりだ。

アムネスティ国際ニュース
2025年3月4日

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