フィリピン：ドゥテルテ前大統領の逮捕 正義への画期的な一歩

2025年3月13日

[国際事務局発表ニュース]

国・地域：フィリピン

トピック：

今回の逮捕は、前政権による「麻薬戦争」に対する正義を求めていた数千にのぼる犠牲者、被害者にとって、待ち望まれていた画期的な前進と言える。ドゥテルテ前大統領は、「私の仕事は人を殺すことだ」と言い放ち、意図的で組織化された広範におよぶ国家承認の殺人を指揮していた。子どもも対象になった「麻薬戦争」で、フィリピン全土が悲しみでおおわれた。

ドゥテルテ前大統領に対するICCの逮捕状は、極悪非道の犯罪の容疑者は、国の指導者であろうと、世界のどこにいようと、正義の裁きが下されるということを示すものであり、フィリピンをはじめとする世界各地の人権侵害の被害者にとって希望の光になる。あまりにも多くの政府がICCへの義務に背き、国際法廷を攻撃したり制裁を加えたりする政府まである中で、今回の逮捕は国際法の力を示した重大な出来事と言える。

フィリピン政府の断固たる措置は称賛に値するが、責任追及はここで終わってはならない。ICCの捜査は過去10年間に起きた犯罪の一部にしか及ばない。ドゥテルテ前大統領は同国における重大な人権危機を引き起こした中心人物だったが、刑事責任が問われるのは彼だけではない。また、前大統領が政権から退いた後、人権侵害がなくなったわけでもない。現政権には、ドゥテルテ前大統領の逮捕で捜査や訴追を終わりにせずに、「麻薬戦争」における人権侵害に加担した人物全員の責任を問うことが求められる。

人道に対する罪の容疑で、フィリピン当局は、ドゥテルテ前大統領をICC（オランダのハーグ）に引き渡さなければならない。同氏の移送までは、公正な裁判を受ける権利やその他の法的権利を厳格に保障されるべきだ。

アムネスティはフィリピン政府に対し、ローマ規程に再加盟し、ICCの調査に全面的に協力し、政府元高官、現高官に対して逮捕状が発行された場合にも同様の協力を行うよう求めている。

背景情報

3月11日、香港からマニラに戻ったフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ前大統領は、「麻薬戦争」に関わる人道に対する罪で国際刑事裁判所（ICC）が発行した逮捕状に基づき逮捕された。同国のメディアは逮捕状の写真を公開しているが、ICCは逮捕状の発行を公表はしていない。

ICCは、ドゥテルテ政権下での「麻薬戦争」をめぐる殺害や、2011年から2016年にかけて同氏がダバオ市長を務めていた時期に「死の部隊」と呼ばれる自警団がダバオ市で行ったとされる犯罪などが人道に対する罪に相当する可能性について、捜査を進めてきた。

フィリピンは2011年11月にICCの加盟国になったが、2018年に脱退を通告し、2019年3月に脱退した。しかし、加盟期間中に国内で発生したとされる犯罪については、ICCが管轄権を有している。

2016年から2022年までのドゥテルテ政権下では、政府による「麻薬戦争」の中で、警察、または警察とつながりがあると思われる武装した個人により、主に貧困層や社会の周縁に追いやられたコミュニティ出身の数千人が違法に殺害された。

アムネスティは、警察とその上部組織による超法規的処刑やその他の人権侵害について詳細に調査した報告書を発表し、こうした行為が人道に対する罪に相当すると結論づけている。

アムネスティ国際ニュース
2025年3月11日

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• Former President Duterte’s arrest a monumental step for justice