- 2025年3月10日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:エルサルバドル
- トピック:
非常事態宣言下のエルサルバドルで、人権侵害が深刻化している。拘束者数が84,000人を超え、その多くが不当に拘束され、拷問、強制失踪、刑務所内での死亡者が数百件にのぼるとされている。
2月12日、立法議会は深刻な人権侵害に拍車をかける一連の改正法案を可決した。市民団体や国内外の人権団体が指摘するように、法案は18歳未満の少年を特に念頭に置いている。
刑務所法、少年刑法、組織犯罪法の改正により、自由を奪われた人たち、とりわけ子どもや青少年が劣悪な環境に置かれ、懲罰的な処遇を受けることになる。一連の法改正は、適切な保護措置がないまま大規模な抑圧を推し進め、さらなる人権侵害を引き起こす可能性がある。
2022年3月に非常事態宣言が発令されて以来、エルサルバドル政府は適正手続きを保障することなく、証拠が不十分なまま大勢の人を拘束してきた。2月22日に施行された一連の改正法は、子どもを含むすべての市民の自由のはく奪の制度化であり、明らかに国際人権基準に違反する。立法府を利用して弾圧に免罪符を与えるものであり、非常事態が一時的な措置ではなく恒久的な政府の戦略であることを示している。
子どもを成人扱いする罰則制度
非常事態宣言の発令以来、多数の子どもや青少年の拘束が報告されている。複数の人権団体の報告によると、1,000人以上の子どもや青少年が、非人道的な環境で拘束され、不十分な証拠を基に、あるいは自白を強要され、違法結社などの罪で有罪判決を受けている。
少年法の改正により、組織犯罪で有罪になった青年の一般刑務所への移送が可能になったが、これも国際基準に反している。子どもの権利条約と少年司法運営に関する国連最低基準規則(北京ルールズ)は、法に触れた子どもは、懲罰としての収監ではなく、社会復帰を目指した処遇を受けるべきだと定めている。
刑務所法では、刑務所内に18歳未満の子どもと18歳以上21歳までの青少年向けの特別区域の設置が認められているが、年齢で分けたとしても、青少年を暴力や虐待から保護することにはならず、また教育や社会復帰プログラムの利用を保証するものでもない。今回の改正で青少年は一般の刑務所に収容されることになるが、一般の刑務所では、囚人がすし詰め状態に置かれ、拷問がまん延し、これまでに300人以上が亡くなっている。当局は子どもや青少年を保護し、社会復帰を保証するどころか、彼らを暴力がはびこる非人道的な環境に追いやるのだ。これは拷問その他の残虐な、非人道的あるいは品位を傷つける取り扱い・刑罰に相当する。
自由のはく奪は、国際基準が定める例外的な状況でのみ適用される最終手段でなければならない。一連の法改正は、明確な国際基準違反であり、数千人の若者の身を危険にさらす。
重くなる判決
さらに、組織犯罪法の改正により、少年か成人かを問わず同法が定める特定の犯罪を犯せば、条件付き釈放などが受けらなくなる。この対応は、社会復帰の可能性を損なうもので、国連の被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)や米州人権条約に違反する。
今回の法改正は懲罰と抑圧に基づく投獄を制度化するものであり、司法による監視の仕組みが機能しなくなる。司法の保障どころか、適正手続き違反を助長し、刑務所内での拷問や非人道的な処遇が増えるおそれがある。
国際社会への訴え
エルサルバドルは国際人権機関に刑務所への立ち入りを認め、一方で国際社会は、エルサルバドルの刑務所の問題を明らかにする第三者による監視体制を設けるべきだ。エルサルバドルは、速やかに今回の法改正を見直し、刑務所制度を国際人権基準に沿った内容に改正する必要がある。同国の安全保障政策は、大規模な収監と、人びとの権利を保護する法律の弱体化に基づくものであってはならない。
アムネスティ国際ニュース
2025年2月27日
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