日本:「第2次人権教育・啓発に関する基本計画(案)」に対し、あなたの意見を送ってください!

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2025年2月21日
[ブログ]
国・地域:日本
トピック:

法務省は人権教育・啓発に関する基本計画(案)を発表し、意見の募集を始めました(パグリックコメント)。パブリックコメントは、あなたの意見を日本政府の政策やルール作りに、市民の一人として参加する機会です。

人が生まれながらに持つ権利が尊重され、侵されることがないための人権教育・啓発の施策となるよう、ぜひ直接法務省へあなたの意見を送ってください。

※締切は2025年2月26日(水)と期間が短いですが、できるかぎり多くの方に、ご意見を法務省へ送るよう、呼びかけてください。
※送り先はアムネスティ宛でなく、法務省宛でお願いします。

政府の第2次人権教育・啓発に関する基本計画(案)について
アムネスティが政府に伝えたいポイントは以下の通りです。

■人権教育は、「すべての人が人権を享受でき、人間らしく生きることのできる世界の実現をめざすため」の教育であり、「自分らしく生きるためのちからを取り戻すエンパワメントの教育」でもあります。

政府案では、現在の人権教育・啓発の意義・目的を、私たち市民の心構えや思いやり、やさしさ、といった感覚的なものに頼っています。しかし、それでは権利を主張して声を上げること自体が否定的に受け止められたり、また、相手のために良いことをしているとする意識や行為が正当化することにつながりかねません。また、政府案には、権利を持つ当事者のエンパワメントという視点が欠けています。とりわけ、人権教育・啓発を推進する上で、権利侵害を受けやすい、女性、子ども、障がい者、外国人、高齢者といった周辺化されやすい人たちがエンパワメントされることはとても重要です。また、人権に関わる問題を個人と個人の関係のなかで、「心の持ちよう」によって解決しようと流す試みだけでは、公権力と個人の間で起こる人権問題の解決には決してつながりません。思いやり、やさしさは、私たちの日常の生活の中で大切なことですが、人権問題もその方法で解決されるという誤解を与えることを懸念します。

<提案>

該当箇所
□ 第3章 人権教育・啓発の基本的な在り方_2 人権教育の意義・目的

人権教育の意義と目的は、「すべての人が人権を享受でき、人間らしく生きることのできる世界の実現をめざすための教育」であることを明確にし、さらに「自分らしく生きるためのちからを取り戻すエンパワメントの教育」であることを明記する。

■人権教育・啓発計画(案)に記載がある「中立性」という言葉の定義を明確にする必要があります。

基本計画案では、「人権教育・啓発を担当する行政は、特定の個人・団体等から不当な影響を受けることなく、また、公益法人、特定非営利活動法人、民間などとの連携の場合は、その主体性や中立性を確保すること、十分に配慮すること」が求められています。しかしながら、だれが、どのような判断基準のもと、その主体性、中立性を判断するのかが不明です。特に「中立性」という言葉は極めて恣意的であり、国や公権力にとって都合が悪く好ましくないと判断された場合、その団体の活動が、憲法や国際人権諸条約に基づくものであっても、排除される可能性が生じのではないでしょうか。

その基準が記載されていないことで、民間などの優れた人権教育素材、研修内容などが活用されることなく、また、当事者団体としての声を教育の場に届けられなくなること、当事者を無視したり、人権教育における実践との関連を軽視することになりかねない側面があることを憂慮します。

<提案>

該当箇所
□ 第4章 人権教育・啓発の基本的在り方_3 国民の自主性の尊重と教育・啓発における中立性の確保
□ 第5章 人権教育・啓発の推進方策_4総合的かつ効果的な推進体制等

「「中立性」を判断する基準として、憲法、日本が批准する国際人権条約に基づくものである」という文言を追記することを提案します。また、「公益法人、特定非営利活動法人、民間団体など、市民と協働して人権意識の向上を図る体制をつくる」ことを提案します。

■日本が共同提案国となっている国連の「人権教育のための世界計画」、日本が批准する国際人権条約の内容、国連人権教育宣言を日本の人権教育・啓発計画に反映させることが求められます。

日本は、人種差別撤廃条約、社会権規約、自由権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、障害者権利条約、難民条約はじめ、批准する議定書を遵守する責任があり、さらには、その内容を人権教育・啓発の過程で市民に広く周知し、理解を深め、学ぶ機会を創出する必要があります。しかしながら、第二次基本計画には、国際的潮流の動向が重要視されているにもかかわらず、それらの具体的施策がありません。国連「人権教育のための世界計画」では、人権教育を「人権について学び、日常生活で人権を行使するスキルを身に付ける」「人権尊重の姿勢、価値観及び信念を進展又は強化させる」「人権を擁護し、促進する行動をとる」といった生涯にわたるプロセスであることが強調されていますが、基本計画(案)では、全体を通じて、人権教育が生涯にわたるプロセスである記載が抜け落ちています。

<提案>

該当箇所1
□第2章_国際的潮流の動向_3 国際的潮流の動向

「国際人権基準に基づいた教育を推進するため、「国連人権教育宣言」、「人権教育のための世界計画」、そして日本が批准する国際人権条約を反映させたカリキュラムを整備する」ことを明記する。(例えば、ユネスコなどの国際機関が開発した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づく「包括的性教育」は、人権教育・啓発を推進する上で重要です。)

該当箇所2
□ 全体

「国連「人権教育のための世界計画」の人権教育の定義に基づき、人権教育が生涯にわたるプロセスである」ことを明記する。

■人権救済機能、政策提言機能、人権教育機能、そして国連や他国の人権機関との協力機能を有する独立した国内人権機関は、日本の人権教育・啓発を推進するうえで重要な役割を果たします。

案には「問題事例を発生させることのないよう」との記載がありますが、現実に学校の教職員・社会教育関係職員、病院・福祉関係職員、警察職員、検察職員、矯正施設職員、更生保護官署関係職員、出入国在留管理庁職員、出入国在留管理庁職員など、公的機関、公権力によって人権が侵害されていることを考慮すると、人権侵害の人権教育や研修プログラムを充実させ実施するだけでは不十分だと考えます。また、問題発生後の対処の方策については、全く記載がなされていません。国内人権機関の機能は、人権侵害の申立に対する調査、救済方法の提示に加え、一般市民や裁判官・法執行官などに対する人権教育を実施する役割を担います。人権教育と人権救済機能を持つ国内人権機関の必要性を訴えます。さらに、人権教育が「すべての人が人権を享受でき、人間らしく生きることのできる世界の実現をめざすため」の教育であることに立脚すると、立法や行政の活動が国際人権基準になるための提言も行う国内人権機関を計画に含めることが非常に重要です。

<提案>

該当箇所
□第5章 人権教育・啓発の推進方策_3人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等

「パリ原則に準拠した国内人権機関の設置に関して、具体的な議論を進め実行に移すこと」を明記する。

■人権教育・啓発を推進する過程で、国際的に日本の人権課題の一つと指摘される死刑制度について、私たち一人ひとりが考え、広く議論され、市民と政府との対話の場を設けることが必要です。

日本に対して、国際的に取り上げられる人権課題に死刑制度があります。自由権規約委員会は、「締約国は、世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、必要に 応じて、国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」(2008)と勧告しており、「死刑の在り方についての勉強会] 」取りまとめ報告書(2012,法務省)では、「死刑制度の存廃については,現時点で本勉強会として,結論の取りまとめを行うことは相当ではない」としながらも「本勉強会における議論の内容を現時点で取りまとめた上で,これを 国民に明らかにし,国民の間で更に議論が深められることが望まれる。」と書かれています。これを踏まえ、死刑制度に関わる情報開示の上、人権教育・啓発を推進する過程で、死刑制度について広く議論がされ、市民と政府が対話する場が必要です。

<提案>

該当箇所
□第5章 人権教育・啓発の推進方策_2 各人権課題に対する取組_ソ その他

「日本の人権教育・啓発を推進する過程で、死刑制度に関わる情報開示がなされ、死刑制度について広く議論がされ、市民と政府が対話する場をつくる」ことを追記する。

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意見提出される場合は、個人のご意見とあわせて、上記のポイントも参考にしていただけると幸いです。

また、意見提出の方法・注意点は、以下の「政府の第2次人権教育・啓発に関する基本計画(案)パブコメ提出ガイド」も参考にしていただき、法務省へ直接送ってください。

【提出方法】

▽ 人権教育・啓発に関する基本計画(第二次)中間試案 に係る意見公募
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000286123

【人権教育・啓発に関する基本計画(第二次)中間試案】

https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000286124

【意見提出用紙】

https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000286125

 

締切:2025年2月26日(水)23:59分(必着)

<本件に関するおい合わせ先>
法務省人権擁護局人権啓発課
電話:03-3580―4111(内線 5874・5875)

※アムネスティ・インターナショナル日本としては、後日意見を提出予定です。会員の方は、個人としてご提出ください。