- 2025年2月 4日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:パキスタン
- トピック:表現の自由
1月23日、電子犯罪防止改正法案がパキスタンの国民議会(下院)で可決された。同法案が両院で可決されれば、すでに厳しい管理下にあるデジタル環境への国の統制がさらに強まることになる。
改正案では、「虚偽の情報」や「偽情報」を流した者に刑事罰が導入され、最高で禁錮3年と罰金が科される。犯罪を構成する要件があいまいな上、これまで電子犯罪防止法が政府批判の封じ込めに利用されてきたことを考えると、法改正でこの国にわずかに残されたオンライン空間での表現の自由がさらに制限されるのではないかという懸念がある。
協議や議論が一切ないまま提出されたこの改正案は、電気通信庁の権限を拡大するものだ。ソーシャルメディア規制・保護機関が新設され、あいまいな基準に基づいてコンテンツをブロックしたり削除したりする権限が当局に与えられる。表現の自由の権利を侵害するものであり、国際人権法における比例原則や必要性の基準を満たさない。
こうした動きは、個人のプライバシーを大きく侵害するようなデジタル監視技術の導入や「デジタル国家パキスタン法案」などの法制化とともに進められている。いずれも、人権を保護する保障措置や制度が盛り込まれていない。
アムネスティは当局に対し、この法案を直ちに撤回し、国際人権法に沿った電子犯罪防止法の改正に向け、市民社会と有意義な協議を行うよう求める。
背景情報
改正法案は1月23日に国民議会に提出・可決されたが、野党、メディア、市民社会の反発を受け、翌日、上院の常任委員会に付託された。
2016年に成立した電子犯罪防止法は、表現の自由や情報へのアクセスの権利に重大な影響を与えるおそれがあるとして、人権団体や活動家から激しい批判を浴びた。その後9年間、ジャーナリスト、人権擁護者、反政権派が、同法の適用を受けてきたことで、当初の懸念が現実になった。最近では、当局はソーシャルメディア・プラットフォームの全面禁止令を頻繁に出しており、X(旧ツイッター)は昨年 2月から閉鎖されている。
アムネスティ国際ニュース
2025年1月24日
※追記:報道によれば改正法案は1月28日に上院で可決され、大統領の署名を待つのみとなっている。
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