- 2025年2月 3日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:アフガニスタン
- トピック:
国際刑事裁判所(ICC)の検察局は1月23日、アフガニスタンでジェンダーに基づく迫害を行ったとして、人道に対する罪の疑いで、タリバンの最高指導者ハイバトゥラー・アクンザダとタリバンの主席判事アブドゥル・ハキーム・ハッカーニの逮捕状を請求した。
この対応は、国内外に住むアフガニスタン女性・少女、性自認やジェンダー表現を理由に迫害を受けてきたLGBTQI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クイア、インターセックス)の人びとらに希望を与える上で大きな前進と言える。また、ジェンダーを理由に、教育を受ける権利、移動の自由、表現の自由、私生活・家族生活の自由、集会の自由、身体完全性・決定権などの基本的権利を剥奪してきた者の責任を問う上でも重要な一歩となる。
アムネスティは、ジェンダーに基づく制度化された抑圧と支配の体制と闘うために、ジェンダーに基づく差別を国際法上の犯罪とするよう、国際社会に呼びかけている。
ICC検察官は、今回の容疑が2年以上にわたって全土で行われ多数市民に影響を与えてきた虐待・迫害のごく一部に過ぎないことを認めている。アフガニスタンで司法制度の利用による問題解決が大幅に遅れている現状を考えると、ICCと国際社会には、ジェンダーに基づく迫害や国際法違反の犯罪に対処するための取り組みを早急に強化する義務がある。
ICC検察官は、捜査対象を2003年5月以降の国際法違反に該当する重大な人権侵害すべてに広げるべきだ。超法規的殺害、拷問・虐待、恣意的な逮捕や拘束、強制失踪、民間人の虐殺、イスラム国(IS)によるホラーサーン州のハザラ民族と宗教的少数派への攻撃などの人権侵害である。
またアフガニスタンに駐留していた米軍、CIA職員、その他の国際治安部隊、前政権の保安機関が行ったとされる戦争犯罪の捜査を後回しにした2021年の決定を再考すべきだ。この決定は、国際法に基づく犯罪の被害者の司法の権利よりも強力な国家とその同盟国の利益を優先するという国際司法の不公平さに対する認識を助長するおそれがある。
背景情報
ICCの検察局は1月23日、アフガニスタン情勢における逮捕状請求について声明を発表した。逮捕状請求は、ICCの予審裁判所の判事により審理され、名前が挙げられた人物の容疑に合理的な根拠があるかどうかが判断される。検察局は、捜査が進行中であることも発表しており、今後も新たな人物や犯罪容疑に対する逮捕状請求が行われる可能性がある。
アムネスティは2023年に、女性・少女へのジェンダーに基づく迫害というタリバンの人道に対する罪を糾弾した調査報告書を発表している。2022年にも別の報告書で、女性と女性の権利に対するタリバンの攻撃、拷問、迫害、強制失踪などを明らかにした。女性と少女の権利の差別的制限は、タリバンの政策、決定、法律を通して制度化され、女性・少女の生活全般に影響を与えてきた。
アフガニスタンは、2007年から2017年までICC検察官により予備審査を受けていた。ICCは2022年、国内レベルでは実質的に捜査は行われていないと結論付け、アフガニスタンの状況についての捜査を再開した。政権に復帰したタリバンは、公正な裁判を受ける手立てを封じ、既存の憲法と法律を無効にしている。
アムネスティ国際ニュース
2025年1月24日
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