日本:回答「JICABIC第202406270004号」に関する遺憾表明

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2025年1月19日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:

2025年1月19日

独立行政法人 国際協力機構 中部センター
所長 上町 透 様

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 田嶋 俊博

 

回答「JICABIC第202406270004号」に関する遺憾表明

 

拝啓

厳寒の候、貴台におかれましては、益々ご清栄のことと存じます。日頃は当法人の名古屋での活動におきましては、さまざまな場面でお世話になっております。

さて、本法人は表題の回答に関わる企画(「いつか自由で平和な祖国へ!サハラウィ難民キャンプからの報告」2023年11月6日)に対して、本法人に属する第15グループ、および第109グループが、特定非営利活動法人名古屋NGOセンター(以下、名古屋NGOセンター)と共同開催することを許可いたしました。両グループからの報告によると、事前の打診(2023年9月)では施設利用が可能であるとの見解が示されたものの、施設利用申請提出後には回答「JICABIC第202402140001号」(注1)によって不承認とされ、主催者らは別の公共施設での開催を余儀なくされたとのことです。

この件について、名古屋NGOセンターは、そのホームページ上に、2024年11月18日付けで「なごや地球ひろば施設利用不承認に関する公開質問状について」(2024/11/21最終更新)を掲載しました(注2)。この質問状に対する、貴台の回答では「想定されていたイベント内容に関連する国若しくは国際機関から照会を受け、その対応により業務遂行の妨げになる或いは円滑な業務遂行が確保されなくなるおそれがあると判断」となっております。この判断に対して、本法人は名古屋NGOセンターが表明している見解を支持いたします。さらに本状は、不承認に関する文書での回答が非常に遅かった点に加えて、下記の見地から遺憾の意を表明するものです。

注1 https://nangoc.org/wp-content/uploads/2024/06/61395a75157c4ae11af471407bee2a50.pdf
注2 https://nangoc.org/2024/11/21/koukai/

敬具

  1. 当該企画の主題である西サハラ問題に関する本法人の見解

    (1)本法人では、この問題は西サハラ難民に対する人権侵害であるとの見地から、本法人の機関誌やホームページで、長年にわたり紹介してきた(注3)。
    (2)このような人権侵害は政治問題が背景にあるものの、まずは人道上の問題として緊急避難的に西サハラ難民を救済すべきである。
    (3)現在の日本ではこの問題への周知が不十分であるために、深刻な人権侵害が続いているにも関わらず、市民の関心が高いとはいえない。それ故、啓発活動を行うことは非常に有意義である。

    注3 本法人の西サハラ問題に関する情報発信事例
    2001年2月5日 ニュース・レター(324)「FOCUS 特別寄稿 「西サハラ問題」とは何か」新郷啓子
    2005年10月25日 アムネスティ国際ニュース/モロッコ/西サハラ:大量の強制送還に懸念
    2017年4月18日 アムネスティ国際ニュース/国連は西サハラの監視団に人権監視任務を
    2018年9月20日 アムネスティ国際ニュース/モロッコ/西サハラ:難民らの強制的僻地移動は不当
     
  2. 国際協力機構(JICA)の国際人権問題への関与方針について

    以下に挙げるJICAのホームページにおいて表明された方針に照らせば、アフリカ諸国における問題解決はJICAの最優先課題のひとつである。その中でも、西サハラ問題に関する情報を広く周知することは、以下のビジョンに合致しており、積極的に取り組む価値のある活動であるといえる。

    (1)JICAのビジョンの筆頭に「人間の安全保障」を以下のように説明し、日本政府の新ODA大綱で、この「人間の安全保障」の概念を取り入れたODAの実施をめざしているとしている。

    「今日、国家による安全保障のみにより個々の人間の安全を守ることは困難になっています。紛争、地球温暖化、武器や薬物の拡散、感染症の拡大、これらの問題は国家の枠組みを容易に超え、人々の生命や生活を脅かしています。こうした現象から、ひとりひとりのいのちの尊厳や生活を守るために必要と考えられるのが「人間の安全保障」という概念です。中心に捉えるのは「人間」であり、人々が着実に力をつけ自立することを重視する考え方です」

    (2)国際連合の主導する「持続可能な開発目標(SDGs)」に関わるJICAの方針

    ア、「JICAのSDGsへの貢献に向けた取り組み方針」として重視している。とりわけ、「ゴール16の達成に向けたJICAの取組方針」では「平和で包摂的な社会に基づく「誰一人取り残さない」持続可能な開発のためには、一人ひとりの権利が保障され、人々が安心して経済社会活動に従事し,社会が公正かつ安定的に運営されることが不可欠である。JICAは、そうした発展の前提となる基盤を強化する観点から、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配、ジェンダー平等といった普遍的価値の共有のほか、公正で包摂的、且つ平和で安定し、安全な社会の実現のための支援を行う」と表明している。

    イ、「ゴール17の達成に向けたJICAの取組方針」の項目では「JICAには、自らのミッション・ビジョン・アクションのもと、ODA実施機関としてSDGs達成に貢献することが求められている。そのためには、大局的な観点から戦略的に事業を構想し、様々な知と資源を結集すべくあらゆるアクターと連携・共創し、革新的なアプローチを積極的に導入・展開していく必要がある」としている。

    ウ、「注力するターゲット」では「17.17 公的、官民、市民社会のパートナーシップの推進」を「(JICAの強みを踏まえ特に着目するターゲット)」としている。JICAのビジョンへの真摯な取組みを目指すのであれば、上記(2)イ、ウに示したようなパートナーシップを今後もさらに重視すべきである。

    (3)西サハラ問題への支援を行うJICAパートナーの取組み

    JICAパートナーに認定されている国際協力NGOセンター(JANIC)では、2020年1月9日に同じくJICAパートナーであるアフリカ日本協議会が開催した「自由と尊厳を求めて サハラーウィ40余年の闘い」と題した講演会をホームページ上で紹介している。JANICは、この企画の講演者である新郷啓子氏の著書『抵抗の轍 アフリカ最後の植民地、西サハラ』の発刊もホームページで紹介している。

以上のような見地から、当該企画は正にJICA中部においても、積極的に推進すべきものであった。今後はJICAのビジョン実現のためにも、広い視野に立ち、多様なアクターとの連携を推進されることを切に希望する。

以上