シリア:アサド政権下の人権侵害を正す歴史的な機会

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2024年12月17日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:シリア
トピック:

首都ダマスカスで反体制派勢力が権力を掌握し、バッシャール・アル・アサド大統領は失脚した。50年以上にわたって残虐行為と抑圧にさらされてきたシリアの人びとに、ようやく恐怖から解放され、権利が尊重される生活を送ることができる可能性が開けてきた。

バッシャール・アル・アサドとその父ハーフィズ・アル・アサドの両政権下で、人びとは計り知れないほど多大な苦しみをもたらす数々の人権侵害に耐えてきた。これらの人権侵害には、化学兵器、樽爆弾による攻撃、その他の戦争犯罪、殺人、拷問、強制失踪、虐殺など、人道に対する罪も含まれている。今こそ、この歴史的な機会を捉え、何十年にもわたる重大な人権侵害を正さなければならない。

アムネスティは反政府勢力に対し、今後は武力ではなく平和的手段を選ぶよう呼びかけたい。最も重要なことは報復ではなく正義だ。現在進行中の紛争のすべての当事者に対して、国際的な武力紛争に関する諸法を全面的に尊重するよう求める。例えば、政府軍を含め、降伏の意思を明確に示す者を攻撃しない義務や拘束した者を人道的に扱う義務などの尊重だ。

シリアの歴史における、この痛ましい過去を乗り越えるために提案されるいかなる措置も、正義、責任追及、再発防止の原則に従ったものでなければならない。国際法違反や他の重大な人権侵害の容疑者を捜査の対象とし、根拠があれば起訴し、死刑判決の可能性を排除した公正な裁判で裁かなければならない。

サイドナヤ軍事刑務所をはじめとする全土の刑務所から収容者が釈放されたことにより、何万人もの強制失踪者の家族にとって、場合により数十年先になったとしても、行方不明になった家族のその後を知る可能性が開ける。

このような状況下での責任追及を徹底するために、これまでに行われてきたあらゆる犯罪の証拠を可能な限り収集し、保存するよう努めなければならない。刑務所内の記録をはじめとする文書の保存は極めて重要で、行方不明者のその後を知る上で重要な手掛かりとなり、将来、国際法上の犯罪に対する起訴や裁判の資料になる可能性がある。

アムネスティは国際社会に対して、移行期にシリアの人びとの声に耳を傾けるように呼びかけたい。

国際社会は、アサド政権下での残虐行為の被害者を支援し、国際法上の犯罪に対して正義と賠償を確保しなければならない。具体的には、普遍的管轄権を行使した容疑者の告発、「シリアのための国際的・公平・独立メカニズム(IIIM)」や行方不明者のその後を明らかにするために最近設置された行方不明者に関する国連機関への支援などがある。

背景情報

12月8日のシリア国営テレビで生放送された声明の中で、反体制派はアサド大統領の統治を終わらせ、政治犯を解放したと発表した。アサド大統領は出国したと報じられた。

アムネスティは、2017年の調査報告書の中で、アサド政権下の当局が、シリアで最も悪名高い拘禁施設のサイドナヤ軍事刑務所で、民間人に対する広範かつ組織的な攻撃の一環として、人びとを拷問にかけ、強制的に失踪させ、大勢を絞首刑に処し、拘束者を皆殺しにしてきたことを明らかにした。これらの行為は、人道に対する罪にあたる。

2011年にシリアで反政府運動が始まって以来、アムネスティは、ロシアの支援を受けたシリア政府軍が、反政府武装勢力が支配する地域を繰り返し攻撃した様子を記録してきた。これらの攻撃の中には、砲撃や空爆などによる民間人の住居、病院、医療施設などへの無差別攻撃、直接攻撃があり、樽爆弾、焼夷兵器、国際的に禁止されているクラスター弾などの無誘導兵器がしばしば使用された。

アムネスティ国際ニュース
2024年12月8日

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