- 2024年11月29日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シエラレオネ
- トピック:
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)裁判所は11月7日、シエラレオネの浮浪者取締法は貧困層や社会的に疎外された人びとに対する差別だとする画期的な判決を言い渡した。シエラレオネ政府には、この判決に従い、浮浪者取締法の廃止が求められている。
判決は、公共の場で「ぶらつき」や「怠惰で風紀を乱す」行為など、「きちんと振る舞わない」と見なされた人物を犯罪者とするシエラレオネの浮浪者取締法は、人および人民の権利に関するアフリカ憲章に定められた義務に違反していると認定し、政府に対して、この違反を是正するための適切な立法措置を取るよう命じた。
この歴史的判決は、社会で最も弱い立場にある人びとの人権を保護する上で大きな前進と言える。
今回の判決で、浮浪を犯罪視し、貧困層や社会から疎外された人びとを社会的、経済的立場を理由に処罰するのは、差別であることがあらためて示された。
判決は、浮浪に関する2つの法律が、非差別と移動の自由の権利を侵害していると認定した。これらの権利は、人と人民の権利に関するアフリカ憲章の第2条、第3条第1項、第12条第1項により保護されている。また、シエラレオネはアフリカ憲章の第1条に違反していると強調した。第1条は、アフリカ憲章が保護する権利を保障する法律を制定するよう各国に義務づけているが、同国が浮浪者取締法を廃止しなかったことが、この義務違反であると認定された。
2023年3月22日、アムネスティはECOWAS裁判所に第三者意見書を提出したが、その中で、ぶらつきをはじめとする浮浪行為を処罰する法律は、貧困にあえぐ人びと、LGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の人びと、セックスワーカーなどを差別し、尊厳の権利や合法性の原則に違反すると指摘した。
ECOWAS裁判所は今回、「浮浪を処罰する法律をはじめとする浮浪者取締法は、有害な行為を対象にするというより、貧困や恵まれない境遇にある個人を標的にしている」との見解を示した。
加えて裁判所は、「あいまいで不正確な浮浪者取締法そのものが、恣意的な適用を招きやすく、従って国際人権基準を満たしていない」とし、「貧困層や社会的弱者に対する人権上の義務を政府が順守する上で、処罰ではなく適切な社会的介入が重要だ」と指摘した。
「浮浪者」「悪党や放浪者」「浮浪で風紀を乱す人物」を罰する刑法は、アフリカ33カ国をはじめとして多くの国で依然として施行されている。
シエラレオネほかすべての国が、浮浪者取締法だけでなく、LGBTIの人びと、セックスワーカー、貧困層など社会的に周縁化された人びとに対する差別的な刑法を廃止することが求められる。
背景情報
シエラレオネでは、公共秩序法と略式裁判による犯罪条例で「浮浪」が軽犯罪とみなされる。
同国の公共秩序法第7条は、「馬小屋や建物、回廊の下、または屋外をうろつき、生計を立てる手段を持たず、自分の行為を説明できない場合、浮浪で風紀を乱す人物とみなされ、有罪の場合、最高1カ月の禁錮刑に科される」と規定している。
浮浪者取締法は、植民地支配と奴隷制度の産物であり、旧宗主国が公共の秩序を守る名目で、アフリカをはじめとする諸国に導入した。シエラレオネなどいくつかの国の浮浪者取締法は、英国の法律を基にしたモデル刑法に基づいて導入された。
アムネスティ国際ニュース
2024年11月13日
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