ミャンマー/バングラデシュ:多大な苦難に直面するロヒンギャの人びと

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2024年11月 6日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:先住民族/少数民族

ミャンマーでは、ロヒンギャの人びとが国軍と反政府武装組織アラカン軍の2勢力から迫害を受けている。両者の衝突で数十万人のロヒンギャが国内避難民になり、1万人以上がバングラデシュに避難し、あるいは避難しようとしている。

ロヒンギャは、国軍による弾圧が始まった2017年以来、激しい攻撃にさらされてきた。弾圧開始以降、家族を失ったという人たちが後を絶たず、現在もアラカン軍とロヒンギャ男性を徴兵する国軍の両者から迫害を受けている。その上、隣国バングラデシュに逃れたとしても、食糧、避難所、医療の深刻な不足に直面している。

2021年の軍事クーデター以来、民間人5,000人以上が殺害され、25,000人以上が拘束されたとされる。それ以来、アムネスティは、国軍による無差別な空爆、刑務所での拷問や虐待、集団処罰、恣意的な逮捕などを明らかにしてきた。

ラカイン州では2023年10月、アラカン軍を含む武装勢力の反攻で事態の悪化が始まった。この反撃に対し、国軍は無差別の空爆で対抗して数多くの民間人が犠牲になった。人口60万人を超えるロヒンギャの多くが暮らすラカイン州では、至る所が戦場と化し、多数が避難民となった。

ロヒンギャの人びとは、戦禍から逃れてバングラデシュに入国しようとすると追い返され、入国できたとしても、生活に必要な食糧や住居などが極度に不足する事態に直面している。

今年9月、アムネスティはバングラデシュに避難したロヒンギャ22人に聞き取りをした。バングラデシュでは、100万人を超えるロヒンギャが避難生活を送っている。

バングラデシュが入国を拒否 深刻化するロヒンギャの苦難

アムネスティが聞き取りをしたのはバングラデシュとの国境に近いラカイン州マウンドー郡区から最近、攻撃から逃れてきたばかりのロヒンギャの人びとだ。マウンドーはアラカン軍が国軍から奪取しようとした地域だ。聞き取りに応じた人たちは、避難所、安全、食糧、医療、金銭などを必要としていたが、ミャンマーへの送還は何よりも恐れた。しかし、バングラデシュは難民の送還や移送を禁じるノンルフールマンの原則に違反して、ロヒンギャの人びとを強制送還していることがわかっている。

ロヒンギャの男性(39)は、8月に家族でマウンドーからバングラデシュに向かったが、到着寸前に乗っていた船が転覆し、6人の子どもが全員溺死したという。バングラデシュ国境警備隊が救助を妨害したとの情報もあった。その後、国境警備隊に拘束されミャンマーに送り返されたが、また戻ってきたという。

信頼できる情報筋によると、今年に入ってからの強制送還は5,000件以上にのぼるという。最近バングラデシュに到着した人たちは、国連難民機関に登録できず、支援を受けられないため、食糧にも事欠く事態に陥っている。また、国外追放を恐れて外出を控え、医者にかかりたくてもかかれないという。

聞き取りをした人たちによれば、難民キャンプでは、ロヒンギャ武装勢力の存在により治安が悪化しているという。また一部のロヒンギャ武装勢力が軍事政権と手を組むようになったため、バングラデシュに逃れたロヒンギャ難民は、強制的に連れ戻されて戦場に送り込まれるのではないかと恐れていた。

大多数が第三国での定住を希望

ロヒンギャ難民は、身分証明書類を持たないために移動や誘拐の恐怖を感じている。バングラデシュ政府と人道団体は、難民に基本的な生活支援を提供し、強制送還を阻止する必要がある。同時に、国際社会にも難民支援の強化が求められている。

バングラデシュ当局はアムネスティに対して強制送還を否定したが、国境での入国阻止は認め、これ以上の難民受け入れは困難だと話す。

アラカン軍とミャンマー軍による人権侵害

ミャンマー国軍は数十年にわたりロヒンギャを迫害し、2017年には彼らを一斉に追放した。現在は、徴兵法のもとで彼らに国軍への入隊を強要している。また国軍は、数カ月前から勢力を強めるロヒンギャの武装集団と「和平協定」を結んだと伝えられている。こうした複雑な状況の中、ロヒンギャとラカイン族(アラカン軍は自分たちはその代表だと主張)との間の緊張はさらに高まっている。

また、国内の至る所が戦場となり、国軍と戦う武装集団による人権侵害の申し立ても増えている。多くのロヒンギャは、「両者の戦いの狭間で命を落としている」と話す。

マウンドーの商店主(42)の話では、8月1日に爆弾が自宅近くに落ち、4歳の息子が亡くなった。8月6日、国軍が町にやってきて、ヒンズー教徒と仏教徒の家族全員を安全な地域に移動させたが、ロヒンギャだけは放置されたままだった。

その後、マウンドーの市街地に避難した商店主は、アラカン軍がロヒンギャに銃口を向けていたのを目撃したと証言した。この証言に対して、アラカン軍はアムネスティに、「その証言には信憑性がない」と切り捨てた。また、事前に退避を通告し、避難支援もしたこと、兵士には民間人と戦闘員を区別するよう指示していたとも主張している。

昨年末以来アムネスティは、ラカイン州で国軍の空爆で民間人が亡くなり、インフラが破壊されたことを確認してきた。今年、国軍によるロヒンギャ徴兵の影響で、ロヒンギャがこれまでに経験してきた差別とアパルトヘイトが、さらに深刻になっている。

家族を失う

8月5日、国軍とアラカン軍との戦闘が激しくなり、多数のマウンドー住民がバングラデシュとの国境を流れるナフ川近くに避難せざるを得なくなった。

ロヒンギャの牛商人によると、アラカン軍は無人機を飛ばし、爆弾を投下し、多数の村人が犠牲になった。

マウンドー出身の女性(18)は、両親と幼い姉妹2人を失った。女性の家族は、バングラデシュに渡るための船を探してマウンドーの海岸にたどり着いたところで悲劇に見舞われた。この家族を含む多数が犠牲になった。この女性を含め数人が、「海岸で200体ほどの死体を目撃した」と証言した。

アムネスティが聞き取りをした人たちのほぼ全員が、ミャンマーから逃れる際、少なくとも1人の家族を失ったと言う。

アムネスティが入手した医療記録には、バングラデシュに到着後に難民が受けた負傷の治療が記載されている。8月以降、ミャンマーから逃れてきた人たちの対応が劇的に増えていることがわかる。

アムネスティへの回答で、アラカン軍は、「国軍や国軍と連携する武装集団が最も責任を負うべきだろう」とし、また「目撃者や生存者は武装集団と結びついている可能性がある」と述べた。

アラカン軍は、自分たちの作戦中に起こった可能性のある違反行為について、独立した公正な調査を受け入れるべきだ。また、アラカン軍と国軍は、ともに国際人道法を順守しなければならない。アムネスティは国連安全保障理事会に対し、ミャンマーの状況全体を国際刑事裁判所に付託するよう、引き続き呼びかけていく。

アムネスティ国際ニュース
2024年10月24日

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