- 2024年10月23日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラク
- トピック:子どもの権利
イラク議会は、女性や少女の権利の侵害や差別を助長し、9歳の少女の結婚をも合法化する個人身分法改正案を否決すべきだ。市民社会や女性の権利擁護団体などが、法改正による悪影響を問題視し、法の改悪に反対の声をあげてきた。議会はこれらの声に耳を傾けるべきだ。
イラクの現行法が認める婚姻年齢は男女とも18歳だが、今回の改正法が成立すれば年齢制限が撤廃され、児童婚が認められるようになる。その結果、結婚を強いられた少女は教育の機会を奪われ、性的虐待や早期妊娠による健康被害を受けやすくなる。また、離婚や相続時にも少女の権利が奪われる。
女性と少女の権利保護に向けた法改正が喫緊の課題である中で、今回のあまりに強引な個人身分法の改正手続きは、極めて憂慮される。現刑法では、女性や少女の殺人が「名誉」を理由に情状酌量になり、夫による妻や子どもへの体罰を容認し、夫の性暴力が犯罪とみなさない。
イラク議会は、深刻な問題を抱える刑法改正案を廃案にし、刑法上の重大な問題に取り組む必要がある。
個人身分法は、信仰する宗教に関係なく適用される。改正案が成立すれば、スンニ派とシーア派の宗教評議会は、問題視された個人に対しそれぞれのシャリア法に基づく裁定を下す権限を持つことになる。その結果、女性と少女の権利が脅かされ、法の前の平等が損なわれるおそれがある。
また改正案の成立で、児童婚に関する法律を回避するためにしばしば利用されている届出のない婚姻の合法化への道が開かれ、児童婚の相手である成人男性や結婚の儀式を行う聖職者への罰則が撤廃される。また、離婚した女性は、住み慣れた家での暮らしや元夫からの経済的支援などを受ける権利を失う。
改正案は、イラクが批准する女性差別撤廃条約や子どもの権利条約などの国際条約に違反する。女性と少女の安全、尊厳、権利の保護は、国際人権法の下での法的義務であるだけでなく、イラクのすべての機関が遵守すべき道義的義務でもある。
背景情報
8月4日、個人身分法改正法案の第一読会が実施された。同法案の読会は2014年と2017年にもあったが、世論の厳しい批判を受け、可決には至らなかった。今年9月3日には第二読会に向けた動きがあったが、野党議員がボイコットしたため読会の定足数が満たされず、その後の読会でも複数の議員が懸念を訴えた。イラク連邦最高裁判所は9月17日、改正案はイラクの憲法に沿ったものであると判断している。
アムネスティ国際ニュース
2024年10月10日
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