国連総会は人道に対する罪条約の正式交渉を急げ

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2024年10月18日
[国際事務局発表ニュース]
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国連加盟国は「人道に対する犯罪の防止および処罰に関する条約」の成立に向けた交渉を速やかに開始するための決議を支持すべきだ。同条約は国際司法の枠組みを強化し、加害者が捜査や訴追を免れている事態に対処しようとするものだ。

国連総会第6委員会は現在、「人道に対する罪」という議題を討議中で、会期は11月22日まで予定されている。閉会までの6週間は、人道に対する罪に関する条約の交渉と採択に向け、国際社会が長年の懸案事項を前進させるまたとない機会となる。人道に対する罪の犠牲者や被害者のために、正義、真実、補償を確保する新たな道を開く上で、条約の成立は緊急に必要とされている。

ジェノサイドや戦争犯罪などの国際法上の犯罪とは異なり、人道に対する罪を扱う特定の条約はない。国際刑事裁判所のローマ規程は、ジェノサイドや戦争犯罪などを国際法で違法としている。人道に対する罪に関する条約があれば、個々の国が権限を持ち、国際刑事裁判所を含むより広範な国際司法の枠組みを強化し、充実させることが可能になる。

人道に対する罪の条約案は、さまざまな面で画期的な条約となりうる。条約成立後は、各国は人道に対する罪を犯罪と定め、処罰するだけでなく、人道に対する犯罪を阻止し、法的支援を含めて他国と協力する義務を背負うことになる。

さらにこの条約で、ジェンダー・アパルトヘイト(ジェンダーを理由とした組織的な抑圧。差別、隔離)や強制婚、強制堕胎など、これまで国際的にほとんど無視されてきたジェンダーに基づく犯罪が認識されれば、ジェンダー正義の国際基準が大幅に改善することになる。世界中の女性、少女、LGBTI(レズビアン、ゲイ、トランスジェンダー、インターセックス)の人びとが受けてきた制度的暴力に対して、国際法による適切な対応を今すぐにでも実現しなければならない。

人道に対する罪に関する条約が施行されれば、加害者が処罰を免れるのは極めて難しくなるだろう。

例えば、草案には対象となる犯罪に対して普遍的管轄権を認める規定が含まれている。条約は、犯罪の発生場所や被疑者・被害者の国籍に関係なく、自国の管轄区域内にいる被疑者を起訴または送還することを各国に義務づけ、国際刑事裁判所が追及できない、あるいは追及を望まない場合でも、国内の裁判所が引き受ける権限を得る。

人道に対する罪は世界的な問題である。アムネスティは、過去10年間で少なくとも18カ国で人道に対する罪にあたる犯罪があったことを示す証拠を得て、公表してきた。このような人類の良心に深い衝撃を与える残虐行為は、地球上のどの地域も無縁ではない。アフガニスタン、中国、エチオピア、イラン、イスラエル、被占領パレスチナ地域、ミャンマー、ニカラグア、フィリピン、シリア、ウクライナ、ベネズエラにおける最近の状況を見ても、国際司法制度を強化する喫緊の必要性が痛感される。

アムネスティ国際ニュース
2024年10月9日

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