インド:死刑は犯罪抑止にはなりえない

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2024年9月 9日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:インド
トピック:死刑廃止

西ベンガル州でアパラジタ女性・子ども法案(西ベンガル州刑法改正案)が可決され、強かんの被害者が死亡し、あるいは植物状態になった場合、加害者に死刑が適用されることとなった。

カルカッタの大学病院で8月に女性医師が強かんされ、その後殺害されるという痛ましい事件が発生した。当局にはこの事件に対する真相究明と公正な裁きが求められるが、死刑は女性に対する暴力を抑止する「簡易で効果的な解決策」にはならない。そもそも、死刑が犯罪を抑止する唯一の手段だという主張には根拠がない。

強かんなどの性犯罪に関する法律と刑事司法の改革に向け、2012年に設置されたジャスティス・ヴェルマ委員会やインド法律委員会も、女性に対する暴力犯罪への死刑の適用に反対してきた。

国に求められているのは、犯罪の根本的な原因に対処し、その予防に重点を置いた抜本的な手続き上および制度上の改革だ。

西ベンガル州をはじめとする各州政府は、ジャスティス・ヴェルマ委員会の勧告を全面的に受け入れ、実施していく必要がある。警察組織内の改革、警官の訓練、性犯罪防止対策、被害者への対応と捜査手法などだ。一連の対策は、女性を含む市民にとってインドが安全な国になる上で重要な一歩になる。

中央捜査局は、今回の衝撃的な事件を迅速かつ徹底的に捜査し、容疑者の身柄を拘束し、裁判にかけなければならない。対応が遅れれば、この種の犯罪に対する恐怖心や社会的不安が広がるおそれがある。

背景情報

8月9日、インド東部の西ベンガル州カルカッタにあるRGカル医科大学病院で、研修医の女性(31歳)が何者かに強かんされ、殺害された。衝撃的な事件を受け、全土で抗議の声が広がった。

8月13日、カルカッタ高等裁判所は、この事件の捜査を警察から中央捜査局に移管した。捜査の進展がはかばかしくなく、証拠隠滅の可能性があるとの判断からだった。裁判所はまた、病院側の重大な過失を指摘した。

9月3日、西ベンガル州政府は、「アプラジタ女性および子ども法案」(西ベンガル州刑法案)を可決した。この法案は、インド刑法(2023年)、インド刑事訴訟法(2023年)、児童性犯罪防止法(2012年)を改正するもので、州内での様ざまな性暴力犯罪に対する罰則の強化を目的としている。

アムネスティは、犯罪の種類、犯罪者の特質、死刑執行方法などを問わず、すべての死刑に反対する。死刑は、世界人権宣言で認められている生きる権利の侵害であり、残虐、非人道的かつ品位をおとしめる究極の刑罰である。

アムネスティ国際ニュース
2024年9月3日

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