- 2024年1月18日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
- トピック:地域紛争
ガザ地区でのパレスチナ人に対するイスラエルの行為および不作為がジェノサイド(集団殺害)にあたるとして南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に提訴した訴訟の審理が、1月11日に始まった。この審理により、パレスチナの人びとが保護され、ガザ地区での人道的大惨事が終わり、国際正義に微かな希望の光があたる可能性がある。
南アフリカは、ジェノサイド条約違反にあたる軍事行動の即時停止と、集団懲罰や強制移動に相当する措置の取り消し命令など、ガザのパレスチナ人を保護するための暫定措置をイスラエルに命じるよう、ICJに強く要請している。
アムネスティは、ガザ地区への攻撃がジェノサイドに相当するとの判断は下していない。しかし、わずか3カ月あまりの間に23,000人のパレスチナ人が殺害され10,000人が瓦礫に埋もれて生存が危ぶまれるなど、おびただしい数の殺害と破壊が行われてきた状況と、イスラエル政府と軍事当局によるパレスチナ人に対する非人道的で人種差別的発言が急増していることを考えると、恐ろしい兆候を示している。加えて、イスラエルはガザを違法に封鎖し、民間人が水や食料、医療を手にできないようにしている。ガザ地区の人びとに底知れぬ苦しみを与え、人びとを生存の危機にさらしているのだ。
ガザの人びとの苦しみや破壊行為が終わる見通しはたっていない。ガザが世界最大の「天井のない監獄」から巨大な墓場に変わるおそれが、私たちの目の前で現実のものとなっている。
米国が拒否権を行使して国連安全保障理事会が停戦を求めることを阻止しているため、戦争犯罪や人道に対する罪がはびこっており、ジェノサイドの危険性は現実に存在する。
ICJがイスラエルの行為を検証することは、パレスチナ人の保護に向けた重要な一歩であり、国際法の普遍的適用に対する信用と信頼を回復し、正義と犠牲者への補償への道を切り開くことになる。
ジェノサイドの防止と処罰に関する条約のもと、すべての国にはジェノサイドを阻止するために行動する国際法上の義務がある。以前、ICJが認定したように慣習法であり、条約に加盟していない国も含めすべての国に課せられた義務だ。2023年11月16日、国連の専門家グループは被占領パレスチナで「ジェノサイドが進行しつつある」と警告している。
ガザで過去3カ月間に繰り返し行われた荒廃と破壊の規模をいくら誇張してもしすぎることはない。ガザ北部はほぼ破壊され、少なくともガザ人口の85%が国内避難民になっている。多くのパレスチナ人や人権の専門家は、この事態をガザを「居住不可能」にするイスラエル軍の戦略の一貫だとみている。実際に、一部のイスラエル当局者はパレスチナ人の国外追放とガザからの強制移動を声高に訴えている。
ICJの最終的な判決が出るまでの間、暫定的な措置実施の緊急命令を出すことは、さらなる犠牲や破壊、民間人の苦しみに歯止めをかけるための重要な手段であり、パレスチナ人に対する重大な人権侵害や犯罪に加担してはならないという他の国家に対する警告になる。
背景情報
国民的、民族的、宗教的、人種的な集団の全部または一部を破壊する意図をもって行われる行為が、ジェノサイド(集団殺害)とみなされる。
南アフリカが要請した暫定措置には、「保護される集団の構成員の殺害」や「肉体の破壊をもたらすように意図された生活条件を集団に故意に課すこと」など、ジェノサイド条約第2条に規定された行為の停止を、イスラエルに対して求める内容が含まれている。具体的には、パレスチナ人の強制移動や、食料や水、人道支援、医療品などを確保する手段の剥奪をやめるよう求めている。
南アフリカは今回の提訴で、アムネスティがこれまでの調査で得た情報を引用している。ガザを砲撃するイスラエル軍が、民間人・民用物への直接攻撃、無差別攻撃、民間人の強制移動、集団懲罰など、戦争犯罪やその他の国際法違反にあたる行為を犯したことを示す証拠だ。また、イスラエルがパレスチナ人を支配・抑圧する体制が、アパルトヘイトにあたるとするアムネスティの指摘も引用されていた。
一方でアムネスティは、10月7日に民間人を意図的に殺害し、人質に取り、今も無差別ロケット攻撃を続けるなどの、ハマスその他の武装勢力による戦争犯罪を強く非難している。
アムネスティは、全紛争当事者の国際法違反の調査、即時停戦、ハマスが拘束する人質の解放、イスラエルが恣意的に拘束するパレスチナ人の解放、イスラエルによる違法で非人道的なガザ包囲の停止などを繰り返し求めている。
アムネスティ国際ニュース
2024年1月10日
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