- 2022年8月21日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:パキスタン
- トピック:
身内が強制失踪にあった家族が関係当局に法的措置を求めるのに対して、当局は嫌がらせや脅迫、暴力などで対抗してきた。卑劣で暴力的な当局の対応は、抗議する権利の侵害であり、即刻やめるべきだ。
多くの被害者家族は街頭で抗議の声をあげ、関係当局に身内の解放や消息情報を求めてきた。しかし、法的機能不全、無能な強制失踪委員会、関係機関の不作為に直面し、真相究明の手段を使い果たした被害者家族にとって、抗議デモは当局に圧力をかける唯一の手段になっている。
ところが、抗議した被害者家族が当局から暴力的で過酷な対応を受けることになり、当局の理不尽さが一層際立つ結果になっている。
当局は、抗議する被害者家族への弾圧を直ちに停止すべきだ。
強制失踪は、国際人権法の重大な違反行為であり、国際法の犯罪にあたる。にもかかわらず、パキスタンの情報機関は、人権擁護活動家、政治活動家、学生、ジャーナリストらを標的に、強制失踪という手口を日常的に使っており、数百人が消息不明になっている。
恐喝、違法な逮捕、拘束
グル・ナーズさんは、2009年に兄弟がミンゴラ市で行方不明になって以来、彼の解放と帰宅を求める活動を続けてきた。そのナーズさんによると、自宅を警察が訪れ、家族に私のことを尋ねた上、活動をやめさせるように釘を刺したことがあったという。
別の人によると、昨年ペシャワールであった抗議デモに対応した警官が、「すぐに解散しないと一生忘れないようなことをしてやる」と参加者に警告したという。
アミナ・マスード・ジャンジュアさんは2005年に夫が行方不明になって以来、強制失踪に抗議する活動を続けてきた。ジャンジュアさんの話では、何度も匿名の脅迫電話を受けるようになり、「お前の葬式の準備はできている。お前は殺される」などと言われたという。
抗議や集会を主催する人物が、容疑もなく逮捕され拘束されることもある。
グル・ナーズさんは、「集会に向かう人たちを乗せた車が警察に止められることがあった。それでも行くと言い張れば、その場で車から下ろされただろう」とアムネスティに話した。
また、アムネスティは、警察がデモに参加する人たちの意欲を挫くために、「進路妨害」や「法に従わない」などの不当な容疑をかけていることも確認している。
暴力
6月13日、シンド州警察は、カラチで強制失踪した学生2人の家族や市民団体の抗議活動を解散させるため、不必要で違法な力を行使した。
座り込みデモを取材していたジャーナリスト、ファワド・ハサンさんは、「デモに参加していた女性が警官に平手打ちを食らい、男性の何人かが警棒などで殴られていた。また妊娠していた女性がお腹を蹴られていた」とアムネスティに話した。
カラチであった抗議デモへの激しい弾圧は、被害者家族が日々闘わなければならない国の暴力の凄まじさを象徴している。犯罪として問われるべきは強制失踪であり、抗議活動ではない。
これらの証言から明らかなのは、警察と情報機関が抗議デモを解散させるために不必要で過剰な力を行使しているということだ。集会を解散させるのであれば、当局は必要かつ適切な原則に従って最後の手段として慎重に検討すべきだ。
いかなる捜査当局も、集会の権利を尊重、促進すべきであり、当局の脅しを受けたという申し立てを徹底的かつ公正に捜査する必要がある。アムネスティはこれまでもパキスタン政府に繰り返し求めてきたが、違法行為である強制失踪の全面的停止をあらためて求める。
パキスタンはまた、「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」に加盟する必要がある。
アムネスティ国際ニュース
2022年8月11日
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