- 2022年8月10日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ミャンマー(ビルマ)
- トピック:
(c) Amnesty International
昨年2月の軍事クーデター以降、ミャンマーでは国軍に抗議して拘束され人たちが、嫌がらせや虐待、拷問など卑劣な扱いを執拗に受けている。アムネスティの調査で明らかになった。
アムネスティは今年3月、ミャンマーの国軍や警察当局に拘束されたことがある活動家やその弁護士など15人に聞き取りを行い、報道記事100本以上を検証し、国軍に拘束された人たちのおぞましい体験を、報告書にまとめた。
ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」によると、クーデター以後、国軍当局は市民14,500人以上を拘束し、2,000人以上を殺害した。
令状のない逮捕、拷問などによる自白の強要から強制失踪、親族への報復、収監中の家族や弁護人との接触禁止に至るまで、法律を軽視する国軍当局の姿勢が際立つ。
法を蔑ろにする姿勢は、30年以上もなかった死刑執行が7月に再開されたことでも明らかだ。この死刑執行では、民主活動家や元議員ら4人が犠牲になった。政治犯支援協会によると、現在、死刑囚は70人を超え、うち41人は欠席裁判で死刑を言い渡されている。
国軍は、反発する市民の意思と抵抗心を挫く戦術の一環として、拘束した市民に卑劣で残虐の限りを尽くす対応を取っている。
だが、国軍の一連の対応は逆効果を生んでいる。市民は、7月の不当な死刑執行など一連の人権侵害に屈することなく抵抗を続ける姿勢を変えていない。
国軍は、権利を行使しただけで拘束されている数千人を速やかに釈放しなければならない。国連安全保障理事会は、ミャンマーの事態の国際刑事裁判所への付託、ミャンマーへの武器禁輸や標的制裁を加えることで、国軍への圧力を強めるべきだ。
スタンガンでの拷問や暴行
刑務所の看守らが、拘束した人たちに殴る蹴るの暴行を加え、ライフル銃の台尻や電線などで虐待しているという事実もアムネスティは把握している。
拘束されると、「殺す」とか「強かんする」などの脅しを受けて心理的に追い詰められ、反国軍活動に関わる情報を提供するよう迫られる。受け取った小包に偽爆弾が入っていたという人もいる。拘束を経験した数人によると、流血、骨折などの負傷者や顔が腫れあがった人などを見かけたという。
拘束されていた学生の1人は、「眠っていると殴られた。ライフルの銃口を顔に突きつけられ、『殺すぞ』と脅された」と話す。また、水の入ったバケツに頭を突っ込まれ、尋問中に何度かスタンガン(電撃銃)の銃口を押し付けられた人たちもいたという。
ある学生は、友人が壁に頭をぶつけられていたという。その友人は、スタンガンを性器に押し付けられたり、「手榴弾で破壊するぞ」と脅されたりしていたそうだ。
「服を脱げ」
取調官による性的嫌がらせもあった。
トランスジェンダーの女性ソーハンヌウェイウーさんは、護身術の研修に参加していた疑いで昨年9月に逮捕され、拷問で悪名高いマンダレーの尋問施設に収容された。
水も食事も与えられないままの尋問が3日以上も続いた。係員らに膝を鋭利なもので引っかかれて出血した上に、メチルアルコールを吹き付けられたこともあった。尋問の間、女性としてふるまったが、「お前はゲイだろ。そうなら、俺たちに性器を見せろ」と罵られた。
もう1人の拘束経験者によると、他のLGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)の人たちも「男か女か確認する」と言われてプライベートな部分のチェックを受けた。LGBTIの人たちにとっては、屈辱的な身体検査は虐待や拷問に相当する。
目隠しと首切り
逮捕は通常、夜間に行われる。自宅のドアを蹴破って侵入してきた国軍兵や警官に殴りつけられる。室内を荒らしまわられ、スマートフォンやパソコンなどを没収される。宝石類などを奪われることもある。
抗議活動を主導するマウィンさんは、大都市マンダレーをバスで移動中に逮捕された。顔を殴られ、手錠をかけられ、目隠しをされて、どこかに連行された。24時間以上尋問を受けたがその間、治安隊員に殴る蹴るの暴行を受け、「殺すぞ」と繰り返し脅された。
別の拘束経験者によれば、刑務施設は10人部屋に50人ほどがすし詰めにされ、衛生状態は劣悪で食事の中には虫が入っていることもあったという。
しかし、拘束中の経験で心に深い傷を負うことになったとはいえ、多くの活動家は、抵抗を続ける覚悟でいる。
ソーハンヌウェイウーさんはあきらめない。アムネスティにこう語っている。
「わたしたちは決してあきらめませんよ。私たちは携帯電話みたいのものです。バッテリーが切れたら充電するように、何度でも力を取り戻します」
アムネスティ国際ニュース
2022年8月2日
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