- 2022年6月29日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:マリ
- トピック:地域紛争
マリ北部の紛争が激化する中、武装組織「大サハラのイスラム国」(ISGS)と他の武装勢力との交戦が激化し、数千人が家を追われ、多くの住民が殺害されている。
ISGSは、国軍寄りの2つの武装勢力であるアザワド救済運動(MSA)、「イムガド・トゥアレグ自衛団と同盟集団(GATIA)」と、2015年に和平合意に至ったが、今年3月、メナカ圏での交戦が再び始まった。
ISGSは村々を襲撃し、住民を殺害し、家屋や給水所を破壊し、家畜を奪い取っており、数千人が土地を追われている。ISGSはこの戦争犯罪行為をやめ、すべての紛争当事者は民間人の保護をはじめとして国際人道法を尊重しなければならない。
避難を余儀なくされる人たち
アムネスティは避難民やその受け入れ先、市民活動家、人道支援家など15人から話を聞いた。
アンシャワディからの避難民の1人は「3月以来メナカに入ってくる人が絶えない。私の村ではISGSの襲撃以来70人以上が行方不明になった。家屋や店舗などが壊され、村から追いだされた。井戸や給水所を乗っ取られ、家畜を連れ去られた」と話す。
目撃証言によると、3月の戦闘ではタマラトやインチナネ の村が狙われた。
タマラトの村長は「3月、戦闘員は入ってくるなり銃撃を始め、夕方まで発砲し続けた。私は他の数人となんとか逃げ出すことができたが、多くは行方がわからなくなった。戦闘員は他の部落やメナカに近い給水所にも攻撃を続けたようだ」と語った。
避難民を支援する1人は「襲撃直後の3月に、703世帯以上がタマラトからメナカにやってきた。町中が避難民であふれ、山の中にはまだ大勢の人たちが散り散りになっている」と話す。
ISGSはインチナネを襲った時も同じ残虐行為を働いた。生き残った人によると「奴らは午後にやってきて発砲し始め、女、子ども、老人など見境なく殺した。武装集団が反撃しようとしたが、太刀打ちできなかった。ISGSは家畜全部と役立ちそうなものは何もかも、それに村人も大勢連れ去った。その後給水所を占領してしまった」という。
国際人道法は、武装紛争のすべての当事者は常に民間人と戦闘員を区別しなければならないと定めている。また民間人への直接攻撃や、民間人の生存に不可欠な物資への攻撃を禁じている。
メナカにある市民団体の1人はこう話す。「多くの人たちがやってきたが、砂漠で過ごしている人たちもいる。また、北の方で避難場所を探している人もいる。避難民への人道支援が不足しているため、みんなが人道支援を受けられているわけではない」。
悪化する人道状況
聞き取りをした人たちの話では、避難した人たちはほとんどすべてを失っているためさまざまな人道援助を必要としているが、支援団体の手が回らず深刻な支援不足に陥り、食糧危機が高まっているという。雨露をしのぐ手立ても不足し、新たに到着した人たちの中には学校に身を置く人もいれば、野宿する人もいる。
国連によると人道支援者たちはこの6月までに、イネカルコミューンの避難民キャンプ1,539家族とメナカコミューンの3,079家族に食料などの物資や避難所などを提供した。
すべての武装集団、国軍、平和維持活動をする国連マリ多面的統合安定化ミッションは、民間人の保護を優先しなければならない。またマリ当局とその協力者は連携して、メナカの避難民とアンデランブカネとイネカルに取り残された人たちへの人道支援を提供すべきだ
背景情報
マリでは2012年から武力紛争が続いており、2015年に政府と複数の武装集団間で和平合意がなされる一方で、戦闘は今も続いている。
今年1月以降、メナカ圏でISGSが政府寄り武装勢力MSAとGATIAに攻撃を加える中、民間人に対する攻撃も容赦なく、その件数は増えるばかりだ。ISGSは5月にMSAの主要野営地への猛攻を再開し、ニジェール国境沿いのエミス・エミス、イガンドゥ、アンデランブカネを占拠した。
イスラム過激派掃討を目的とした軍事作戦(バルカンヌ作戦)を展開したフランス軍がマリから撤退していく中でのことだった。
フランス軍がマリから撤退するにあたり、6月13日、メナカのバルカン駐留地はマリ政府に引き渡された。6月現在、マリ当局は同盟関係にある武装集団の支援を受けながら、ISGSに対する再反攻の準備を進めている。国軍、GATIA、MSAによるISGSへの攻勢は、6月13日以降も続いている
アムネスティ国際ニュース
2022年6月16日
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