- 2022年1月29日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:
ドイツのコブレンツ高等裁判所は、人道に反する罪に問われていたシリア情報機関の元幹部アンワル・ラスラン被告に終身刑を言い渡した。ラスラン被告は、悪名高いダマスカスの収容所「251支部」で、収容者の拷問、強かん、殺人などに関わったとされている。
今回の判決は、10年以上にわたり治安機関による拘禁、拷問、性的暴行を受けた数万人の市民や刑務所や拘禁施設での暴力で亡くなった犠牲者家族の声に力を与える歴史的な判断になった。判決は、組織的に行われていた性的暴行を人道に対する罪に認定した点で、特に注目に値する。
シリアの市民活動家、自らの体験を勇気を持って公表してきた被害者、何年にもわたり正義、真実、賠償を求めて闘ってきた人権団体や告発団体、それぞれの存在がなければ、今回の判決もなかっただろう。
今回の判決は、シリア政府と人道に対する罪を犯したにもかかわらず処罰をまぬがれてきた者に対して、罪を犯せば法の裁きを受けるという警告でもある。
シリア国内での刑事訴追は期待できず、国際刑事裁判所に事案を付託する道もないため、国際法の普遍的管轄権の行使が、シリア市民の拷問や殺害に関与した元治安機関の職員らを罪に問う唯一の方法だ。
各国はドイツに倣い、普遍的管轄権を行使し、同様の訴訟手続きを国際法違反の容疑者に対し開始すべきだ。
背景情報
シリア情報機関のアンワル・ラスラン元職員とエヤド・アル・ガリブ元職員は2020年2月、ドイツとフランスの警察に逮捕され、同年4月、「251支部」収容者に加えた拷問が人道に対する罪にあたるとして起訴された。
2021年2月、イヤド・アル・ガリブ被告は、抗議デモ参加者の拷問をほう助した罪で、実刑4年6カ月を言い渡されている。
アムネスティは、シリア各地の当局施設内で行われてきた非人道的行為の実態を調査・告発してきた。シリアでは、強制失踪、拘禁施設内での拷問による死亡、名ばかりの裁判での死刑宣告と処刑などが日常的に発生していた。
いずれの国も、人道に対する罪にあたるこれらの行為に対し、普遍的管轄権の行使が認められ、時にはその義務を負う。
アムネスティ国際ニュース
2022年1月13日