- 2022年1月26日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:エルサルバドル
- トピック:
イスラエルの監視ソフト開発企業NSOグループが開発したスパイウェア「ペガサス」が、エルサルバドルのジャーナリストや市民団体の監視に幅広く利用されている。デジタル著作権の保護に取り組む「アクセス・ナウ」とインターネットの情報統制などを研究するカナダの研究所「シチズン・ラボ」の合同調査でわかった。
アムネスティのセキュリティーラボが、この調査報告書を技術面から検証した結果でも、ペガサスが同国で悪用されていることが確認された。
スパイウェアによる個人の通信情報の監視は、人権への新たな脅威となっている。エルサルバドル政府は、市民の監視など表現の自由を制限するいかなる行為も阻止し、違法監視があれば、徹底した捜査で摘発すべきだ。
当局から攻撃対象になりやすいジャーナリストや市民団体に対する嫌がらせや圧力は今後、さらに強まるおそれがある。国際社会は、人権尊重を要求する活動家やジャーナリストに寄り添い、支持しなければならない。
ナジブ・ブケレ大統領が政権の座についた2019年以降、エルサルバドルの人権状況は悪化の一途をたどり、ジャーナリストや人権活動家への嫌がらせや脅迫が日常化している。
人権の中でも表現の自由は、特に脅威にさらされてきた。当局は、「政府に批判的な発言や行動を断固拒否する」と繰り返し公言し、当局による人権侵害や脅威が告発されれば、告発した人物が不名誉になるような手を打つ。
こうした中、昨年11月、複数のジャーナリストや市民団体の会員らが、国が主導する監視の対象になっている可能性があるという警告を、アップル社から受け取ったことが明らかにされた。
アムネスティは、アクセス・ナウとシチズン・ラボの共同調査の依頼でペガサスによる監視対象者たちの端末情報を、独自に解析した。監視対象者には、報道機関の記者も入っている。
犯罪科学分析の結果、対象者全員の端末が、ペガサスに感染していることが確認された。最も早い感染は、2020年7月30日前後だった。侵入や侵入未遂を示す形跡は、昨年11月15日まで続いている。
昨年、多数の報道機関が参加した調査「ペガサスプロジェクト」が、悪質なデジタル監視が世界にはびこる実態を明らかにした。そしてその後も、スパイウェアが各国で悪用され、ジャーナリストらを対象とする違法な監視が続いていることを、今回の調査は浮き彫りにした。
これまでのところ、違法な監視を制限する取り組みは、世界的にみて不十分だ。アムネスティは、人権保障策がしっかり整備されるまで、各国政府に対しスパイウェアの販売・移転・使用の停止措置を早急に取ることを強く求めている。
アムネスティ国際ニュース
2022年1月13日
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