- 2021年12月21日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府が本日行った高根沢智明さん、小野川光紀さん、藤城康孝さんの死刑執行に強く抗議します。
岸田内閣が示した基本方針では、5つの政策のひとつに「国民を守り抜く、外交・安全保障」を挙げ、そのための取り組みにおける「三つの覚悟」の筆頭に「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜く覚悟」を掲げています。しかしながら、政権発足後わずか1か月あまりで古川禎久法務大臣が死刑執行を行ったことは、外交では人権を守り抜くと言いながら、足元の国内では人権を蔑ろにする岸田政権の姿勢の表れではないかとの懸念を持たざるを得ません。
歴代の法務大臣は、死刑制度の存廃について、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題であり、国民世論に十分に配慮しつつ,社会における正義の実現等の観点から慎重に検討すべき問題であるという見解を繰り返し述べてきました。しかし、その「慎重な検討」は実際に行われているのでしょうか。国内法の内容が国際人権基準に反するものである場合に、その法制度を改正すべく努力することは、政府、法務大臣および法務省に課せられた義務です。成立の時点で国際人権基準に合致する国内法であっても、国際人権基準の進化に合わせた改正を行っていく必要があります。日本政府は、国連の総会決議や人権理事会の普遍的定期審査によって、また複数の国連人権機関から、死刑の執行停止と死刑廃止に向けた取り組みを行うよう、繰り返し強く勧告されていることを忘れてはなりません。国連の自由権規約委員会は「世論の動向にかかわりなく、締約国は死刑の廃止を考慮すべき」とし、世論を口実として死刑廃止に向けた措置を一切とろうとしない日本政府の態度を強く批判しています。
死刑執行はすべての政府が遵守すべき国際人権基準を無視したものであり「人権という普遍的価値を守り抜く覚悟」を政策として掲げた岸田内閣の基本方針と矛盾するものです。世界の7割以上の国が法律上あるいは事実上死刑を廃止しているという潮流に背を向け、日本をますます孤立させることになるものといわざるをえません。
再審請求中であった小野川光紀さんと高根沢智明さんの死刑執行は、自由権規約第6条に違反するものです。国連自由権規約委員会の勧告に基づき、日本政府は再審あるいは恩赦の申請に執行停止効果を持たせたうえで、死刑事件における義務的かつ効果的な再審査の制度を確立すべきです。
日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑にたよらない刑事司法制度を構築する国際的な義務を負っています。ですから、日本政府は、生きる権利をはじめとする人権保障の大原則に立ち戻り、速やかに死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けた全社会的な議論をただちに開始すべきです。
人為的に生命を奪う権利は、何人にも与えられておらず、どのような理由によっても正当化することはできません。アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対します。死刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰です。アムネスティは、日本政府に対し、死刑廃止に向けた第一歩を踏み出すために、死刑の執行停止措置の導入を法制化するようあらためて要請します。
2021年12月21日
アムネスティ・インターナショナル日本
<「敬称」について>
死刑執行抗議声明における「敬称」について アムネスティ日本は、現在、ニュースリリースや公式声明などで使用する敬称を、原則として「さん」に統一しています。また、人権擁護団体として、人間はす べて平等であるという原則に基づいて活動しており、死刑確定者とその他の人々を差別しない、差別してはならない、という立場に立っています。そのため、死刑確定者や執行された人の敬称も原則として「さん」を使用しています。
なぜ、アムネスティは死刑に反対するのか?
死刑に関しては、さまざまな意見があります。その中でもとくに多いのが、「被害者の人権はどうなる」「死刑が廃止されては、『被害者や遺族の感情が納得いかない』」という意見です。そして、この問題が、死刑をめぐる一番難しい問題なのだと思います。
死刑をめぐる世界の状況(2021年4月21日更新)
アムネスティが分析した2020年の死刑の適用状況は、世界の死刑判決数や死刑執行数が減少傾向にあることを顕著に示した。両者の減少を後押しする結果となったのが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック (世界的大流行)である。と同時に、死刑という刑罰制度に内在する残虐性を際立たせる年でもあった。
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