- 2021年6月 4日
- [ブログ]
- 国・地域:ミャンマー(ビルマ)
- トピック:表現の自由
© AFP via Getty Images
言葉だけでは、ミャンマー国軍による抗議する市民の殺害や投獄を止めることはできない。国連安全保障理事会と東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ミャンマー国軍に暴力の停止を求めているが、国軍は要請に応じず、殺害と恣意的拘禁を続けている。
有効な圧力となるはずのミャンマーへの国際的な武器禁輸措置は、安保理が膠着状態のため、実現しないままである。常任理事国の中国とロシア、非常任理事国のインドは、ミャンマーに武器を輸出している主要国だ。
安保理が断固たる行動を起こせないでいる中、ASEANが主導力を発揮しないことには、特に落胆が広がっている。ASEANが、その加盟国であるミャンマーの人権危機を問題視してきたことに、国際社会は敬意を払ってきた。しかし、ASEANとして責務を果たすと約束しながら、腰が引けている状況が続いている。
ASEANは4月24日、暴力の即時停止を求める声明を出したが、ミャンマーは、即座にこの声明の受け入れを拒んだ。それ以来、ASEANは、殺害に歯止めをかける対応をなんら取らず、声明にあった特使の指名もしていない。ASEANは、声明で掲げた5項目(①暴力の即時停止 ②平和的解決に向け関係者間で建設的な対話を開始 ③対話プロセス仲介のためASEANの特使を派遣 ④ASEANによる人道的支援の提供 ⑤特使はミャンマーで全関係者と面会)の実施時期を明らかにし、国軍がこの要請に従わない場合の対応を確認しておく必要がある。
ASEAN諸国は、ミャンマーの人権危機に対応する国連総会決議を支持する50カ国以上の中の主要国との協議にも参加している。ASEAN諸国は現在、ミャンマーで恣意的に逮捕・拘禁・起訴された議員や市民の即時無条件の釈放を求める予定の国連安保理の決議に加わる意思があるかのようにみえる。これは単に正しいことというだけではない。ASEANが約束した対話と仲介は、反政府の市民が拘束されたままでは、事実上、不可能だからだ。
またASEANは、国際的な武器禁輸措置に向けた動きを支持しなければならない。この動きは、アムネスティなど200以上の市民団体と多数の国連加盟国が支持している。ところが、ASEANは、武器禁輸を支持するどころか、決議草案からの削除を求めていた。
国際社会はミャンマー国軍に対し、抗議活動参加者への銃撃、武力紛争地での違法な民間人殺害、市民の大量拘束をやめ、恣意的に拘束した数千人の解放を要求している。各国の行動が、特に国連安保理決議によって義務化されれば、この要求の実施につながるはずだ。
ASEANは武器禁輸を科すことができないが、国軍が市民の反対勢力に対して致命的な暴力や恣意的な拘束を続けている以上、安保理に武器禁輸措置を働きかけるべきだ。
ミャンマーの事態で地域全体の人権危機・人道危機に発展する中、ASEANは今、その信頼性がかつてなく厳しく問われている。状況が悪化する中、ASEANは、安保理に至るまでの国際的圧力をかける重要な手段を持っているのに、使おうとしない。
一方、国軍の抵抗は、徹底している。安保理が3月10日、暴力行為を非難し、「最大限の抑制」を求める声明を出したとき、ミャンマーでは、市民60人が殺害されたと報じられた。
6月2日現在、市民の死者数は842人だ。外交上の空疎な言葉では、市民の犠牲に歯止めはかけられないい。
(ローレンス・モス:アムネスティ・国連政策渉外上級担当)
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