- 2020年1月30日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラク
- トピック:表現の自由
(C) Ali Dab Dab
1月20日と22日、イラクで抗議デモの弾圧が再び激化し、同国の人権委員会によると、バグダッド、バスラ、カルバラ、ディヤラの4都市で少なくとも10人が死亡した。また、バスラの複数の人権活動家によると、22日にはさらに2人が亡くなった。多数のデモ参加者が負傷し、拘束され、拘置所で手ひどい扱いを受ける事態になっている。
アムネスティは、目撃者の証言や治安部隊とデモ隊の衝突場面を撮った複数の動画を分析し、当局が再びデモ隊に実弾を発射したこと、また、昨年11月以降からデモ対応で使われ始めた軍用催涙弾を今回も使用したことを確認した。
入手した証言や動画などから、表現の自由と集会の権利を平和的に行使するデモ参加者に対する殺傷も辞さないイラク当局の姿勢が明らかになった。
治安部隊が一層暴力的な対応を取ったことは、当局が、市民の権利を侵害する行為を終わらせるつもりはないことを示している。
殺傷力の高い武器によるデモ鎮圧は、直ちに停止すべきである。デモ参加者には、「治安部隊は、自分たちを保護するものだ」と期待する権利がある。
デモ隊に銃口
10月以来バグダッドでデモの中心地となってきた地域で1月21日、デモに参加した3人が、治安部隊に撃たれ死亡した。目撃した青年によると、3人は、頭部を狙われたという。また、近くの高架道路上では、治安部隊が、銃を撃ちながらデモ隊を排除し、捕まえた市民数人を5~7メートル下の地上に放り投げるという信じがたい行為も目撃したという。
アムネスティは、その日の高架道路の衝突を撮った動画で、首相直轄の SWATのロゴが入った複数の車両を確認している。
催涙弾で頭部を狙い撃ち
昨年11月と12月のデモ鎮圧でも使用され、多数の死者を出した軍用催涙弾が、今回も使用された。覆面をした男数人が、至近距離から狙うのはデモ参加者たちの頭部だった。複数のビデオカメラがその様子を捉えており、目撃者の証言もあった。
犠牲者の1人は少年で、1、2メートルの至近距離から顔を狙い撃ちされた。目撃者の1人は、「まるで処刑で、大騒ぎだった。少年はなんとか一命は取り止めたが、重体だ。前日にも、別の少年が頭部に催涙弾を受けて死亡したという話だった」と語った。
催涙銃の引き金を引いた人物が、勝利のダンスのように躍っている様子が動画に撮られていた。何とも不快な振る舞いである。催涙弾の犠牲者たちを放り投げるようにして車に積みこむ場面を撮った動画もあった。
住宅街での襲撃
バグダッド市内でデモ鎮圧があった1月21日の夜、市の中心街から数キロ離れた商店が並ぶ住宅街でも、治安当局は、デモ参加者を一網打尽にする作戦を展開した。
昨年10月から抗議活動に参加しているという青年が、その時の様子を説明した。
住宅街の検問所の警官に応援部隊がトラックに乗ってやって来た。応援部隊が空に向けて銃を発射し、デモ参加者を追い回し、殴り倒し、引きずり回し、スマホを取り上げた。
店やジムやカフェなどどこに逃げ込んでも、警官らは容赦しなかった。店員が手を貸そうものなら、店員も取り押さえられた。
バスラでも血の弾圧
デモ参加者によると、バスラでもこの2日間のデモで、治安部隊はデモ参加者を徹底的に排除した。
アムネスティが入手した写真には、参加者の1人が背中を激しく殴られてできたという生々しい傷が写っていた。警察本部近くで撮影されたとみられる動画には、拘束された人たちの悲鳴が響いていた。この4カ月間で、数千人が違法に殺傷され、恣意的に拘束された。
イラク当局は、直ちに治安活動を制限し、重大な暴力行為に加担した関係者を解任するとともに、公正で実効性ある捜査により、当局の説明責任と被害者への補償をしなければならない。
世界がイラクを注視し、その対応の改善に期待している。
アムネスティ国際ニュース
2020年1月23日
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