- 2019年11月 5日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:パキスタン
- トピック:
パキスタン政府が、パンジャブ州の大気汚染問題に有効な対策を取ってこなかったため、汚染は最悪レベルに達し、市民の生存権や健康の権利が脅かされている。
パンジャブ州の大気質(大気汚染の程度)は、ほぼ年間を通じて大気質指数の「ほぼ健康に良くない」か「極めて健康に良くない」という状況にあり、「スモッグの季節」と呼ばれている10月から翌年1月にかけては、「危険」レベルにまで達する。この指数は、パンジャブ州のラホールにある米国領事館が設置した大気質モニターやパキスタン大気質イニシアティブが収集するクラウドソーシングのデータなど複数の情報源に基づく。
大気質指数が300を超えると、市民は屋外でのすべての活動を控えなければならないとされる。先日の10月30日午前10時、現地の指数は、484に達した。
「危険」な大気に長時間さらされることは、喘息や心臓疾患など重大な健康被害リスクとなり、命を縮めかねない。
スモッグの季節にあたる10月から12月にかけては、粗悪な燃料、無規制の排気、野焼きなどが大気汚染に追い打ちをかける。
医学雑誌ランセットの2015年の調査によると、パキスタンの死者の実に22パーセントの死因は公害に由来し、その公害の大部分が大気汚染によるものだった。
建設や農業などに関わる低所得の労働者や社会的に弱い立場の住民は、終日、有害な大気にさらされるため、健康被害のリスクが特に高くなる。
医療サービスはすべての市民の手が届くわけではないため、生活に余裕がなければ、健康被害に対する医療面での予防措置を取ることも困難だ。
大気汚染で視界が悪くなるため、大事故が発生するおそれもある。
また、気候変動が引き起こす気温の上昇で、スモッグが発生しやすくなり、大気の流れも悪くなる。そのため、汚染された大気が滞留してしまう。
パキスタンのスモッグ対策委員会は昨年5月、大気汚染に関する多岐にわたる勧告を出した。地域レベルでのスモッグ対応デスクの設置を促す「パンジャブ・クリーンエア行動計画」を早急に採用し実施することは、その一つだ。
しかし、その後の政府の動きは緩慢で、取り組んだのは勧告のごく一部にすぎなかった。
リアルタイムで大気汚染状況を知ることができる環境保全省の大気汚染データは、いまだに市民が利用できない。また、良質の燃料に切り替える取り組みも、着手されないままだ。
現在、有害な大気に覆われているパンジャブでは、窒息による死者がいつ出てもおかしくない状況にある。政府が大気汚染問題を先送りする余裕は、もはやない。
アムネスティ国際ニュース
2019年10月30日
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