- 2019年4月 2日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ドミニカ
- トピック:女性の権利
ドミニカ共和国では、ジェンダーに基づく暴力があとをたたない。とりわけ、警官によるセックスワーカーへの性暴力事件が多発している。
アムネスティは現地での聞き取り調査を実施し、警官がセックスワーカーに対し差別的な言葉を吐き、性的虐待を日常的に加えていることがわかった。このような警官の暴力は、国際法上のジェンダーに基づく虐待や拷問にあたる可能性がある。
昨年、当局が受けたジェンダーに基づく暴力の被害届は、家庭内暴力が71,000件、性犯罪が6,300件で、6,300件のうち強かんが1,290件だった。
また、女性の殺人事件も多く、国連機関によると、2017年は100件を超えた。また地元のNGOによると、2006年以降、47人のトランスジェンダー女性が殺害されている。
公衆衛生の専門家は、同国でセックスワークに従事するトランスジェンダー女性は少なくとも3,900人、シスジェンダー(トランスジェンダーではない)女性は97,000人がいると推測する。
聞き取り調査した女性のトランスジェンダーとシスジェンダーの割合は、ほぼ半々だった。
彼女らがセックスワークに従事する理由は、さまざまだ。仕事の時間を自由に決められることや高収入が得られることなどだが、生活のために他に選択肢がなかったという場合もあった。
今回、話を聞いたシスジェンダー女性24人のうち10人が、警官に銃口を突きつけられて強かんされた。トランスジェンダー女性も、そのほとんどが警官から差別や性暴力を受けた。
何人かは、深夜に薄暗い通りに止めてあった警察車両内で複数人から強かんされた。
ある女性は、「3人だった。街角で客待ちしていたら、警察のワゴン車に引っ張り込まれ……。触られ、衣服を剥がされ、私のブラウスを引き裂き、次々に……」
セックスワーカーでも、トランスジェンダーなど別の差別要素を抱える女性は、より激しい虐待を受ける。
トランスジェンダー女性たちは、「警官から『おかま』や『悪魔』などと罵られ、人間扱いされない」と語った。また、「警官にかつらを燃やされたり、排泄物で汚れた留置場を掃除させられた」という人もいた。
一方、加害者側の警官がお咎めを受けることはない。国は、警官によるジェンダーに基づく虐待や性暴力問題の実態の把握に必要なデータを持っていない。そのため、加害者の処罰や性犯罪の撲滅に向け、実効性ある手を打つことができない。加害者がその責任を問われなければ、女性への性暴力が問題であるという国や社会の認識は、薄くなるばかりである。
アムネスティは、ダニーロ・メディーナ大統領に対し、警官による強かんや虐待の事実を公に認め、強く批判することを求める。また、検察に対しては、実効性ある捜査手法の検討と実施を求める。
国会は現在、各種差別に対応するために、警察の組織的な改革と社会的弱者の保護を盛り込んだ法案を審議しているが、アムネスティは、その早急な審議と可決を求める。
この法律が発効すると、特に弱い立場にあるトランスジェンダー女性や女性全般への差別や蔑視を排除する取り組みへの道が開ける。
ジェンダーに基づく暴力は、セックスワーカーに対する暴行と同じように男性優位と嫌悪に根差しているが、この法律は、そのまん延に対処する力になる。
アムネスティ国際ニュース
2019年3月28日
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