- 2019年2月 9日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イエメン
- トピック:地域紛争
アラブ首長国連合(UAE)がイエメンの複数の民兵グループに戦闘に使用する火器や車両など装備品を供与していることで、イエメン国内の紛争を助長させていると、公開情報にもとづく分析から、アムネスティは指摘する。
UAEは、西側各国から供与された装甲車、迫撃砲装置、機関銃、ライフル銃、拳銃などの装備品をイエメンの民兵グループに横流ししている。その結果、UAEは民兵による戦争犯罪など重大な犯罪に加担する事態となっている。
米国、英国、フランスなどはサウジアラビア主導の連合軍に、イランはフーシ派に、それぞれ武器供与してきた中でのUAEによる民兵への武器供与だ。民兵組織がUAEから受けるのは、武器供与だけでない。軍事訓練や資金提供も受けている。
イエメンでは、すでに数千人の市民が内戦の犠牲になり、数百万人が飢餓に瀕している。UAEの支援による紛争勢力の拡散が新たな火種となり、市民をますます窮地に陥れかねない。
UAEへの武器供与国
公の情報によると、2015年にイエメンで紛争が始まって以来、西側諸国はUAEに対し、航空機や軍用車両、兵器類、弾薬などを供与してきた。総額は、3.5億米ドル(約350億円)を超える。
供与するのは、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、チェコ、フランス、ドイツ、南アフリカ、韓国、トルコ、英国、米国などだ。
供与される装備品には、米国製のM-ATV(耐地雷/伏撃防護装甲車)、ケイマン(装輪式耐地雷装甲車)、マックスプロ(装輪式装甲車)などの装甲車や、セルビア製のツァスタバM02コヨーテ重機関銃、シンガポール製の120㎜迫撃砲装備を搭載したアグラブ装甲トラックなどの大型の武器も含まれている。
またUAEが訓練や資金を提供する民兵組織の中には、秘密裏に捕虜収容施設を持つものもある。そこでは、拉致した人たちに対し、拘束、電気ショック、水攻めなどの拷問が行われていた。
武器貿易条約の違反
武器供給国の多くは、武器貿易条約やEUの加盟国として、また国内法で、戦争犯罪に使用されるおそれがある武器移転を禁じられている。したがって、イエメンでの重大な人権侵害に使用されるおそれがある限り、各国は、UAEへの武器移転を全面的に停止する必要がある。
デンマーク、フィンランド、オランダ、ノルウェーは最近、UAEへの武器移転をやめると発表した。4カ国の例にならい、一国でも多くの国が武器移転をやめるべきである。さもなければ、供与する武器が戦争犯罪などに加担したとして、その責任を問われることになる。
アムネスティ国際ニュース
2019年2月6日
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