- 2018年11月21日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ミャンマー(ビルマ)
- トピック:難民と移民
バングラデシュとミャンマー(ビルマ)の両国政府は、ロヒンギャ難民のラカイン州への帰還計画を直ちに中止するべきである。
72万人以上のロヒンギャ難民の帰還第一陣が、11月15日に始まろうとしている。先月末に両国が合意した協定に基づくものだが、果たすべき国際的な義務にほど遠い内容だ。今帰還させるのは、無謀でしかない。
ラカイン州は今も、ロヒンギャの人びとを迫害した国軍の支配下にあり、帰還は、身の安全が保障されないことを意味する。
強制送還に伴う多大なリスク
両国は10月30日、昨年8月以降ミャンマーからバングラデシュに逃れた人びとの本国送還を始める合意に達したと発表した。
送還第一陣の対象となる458家族、2,260人が、協定の合意に基づき、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の入念な審査を受ける。
送還協定が発表されたとき、バングラデシュのロヒンギャ難民の動揺は、おおうべくもなかった。難民の人びとへの事前の聞き取りはなく、送還者名簿の名前が、本人の同意にもとづくものかも不明だ。
先週、家族が送還されることを知った1人の男性が自殺した。名簿に自分の名前があることを知って身を隠したり、東南アジアの国を目指して船で脱出を考えている人もいるという。
協定に透明性が無く、ロヒンギャの人びとに届く情報が、あまりに少ない。国軍の掃討作戦で悪夢を見た人びとが、今度は自分たちの帰還先とその後にただならぬ恐怖を抱いている。
安全と尊厳に程遠い今回の送還は、バングラデシュが国際法の義務に違反することを意味する。また、いかなる国も、ロヒンギャの生命と自由の脅威となる送還を支援してはならない。
難民の強制送還は、国際条約などが定めるノン・ルフールマンの原則に違反する。同原則は、重大な人権侵害を受けるおそれがある国・地域への強制的な送還を、無条件に禁じている。
バングラデシュは、ロヒンギャの人びとを心から歓迎し、庇護を提供した。強制送還のプロセスがどうであれ、世界は、ミャンマーの人道に対する罪から逃れた難民に門戸を開くという同国が発揮した主体性に期待を寄せている。
またバングデシュは、UNHCRが本人の意思を確認した難民だけを送還すると断言している。帰国を希望するのであれば、帰国することが権利となり、彼らのこの権利を遂行する上で、UNHCRは重要な役割を担う。
しかし、彼らの意思を真に尊重するのであれば、バングラデシュに残るか、第三国に定住するかなどの選択肢を提供するべきである。何よりも、ロヒンギャ難民自身が、自分の将来を決める主体でなければならない。
ラカイン州で続く違法行為
ラカイン州の状況は何も変わっておらず、安全で尊厳ある帰還が実現される状態にはない。
今も同州に留まる数万人のロヒンギャの人びとは、依然として差別され、荒れ果てた野営地や村で軟禁状態にある。学校や病院に行くこともままならない。また、多数の難民を出した国軍の残虐行為は、いまだ裁かれていない。
人権侵害が常態化し、身の危険と隣り合わせにある土地に戻ることなど、ありえない選択である。
さらに当局は、北部ラカイン州への第三者の立ち入りを今も厳しく制限している。限られた国連関係者らのみが、州内への立ち入りを許され、メディアの取材は、当局の厳しい監視下でしかできない。難民が帰還後、どういう状況にいるかを把握することは、極めて難しい。
ミャンマーが、安全で、自由意志に基づく、尊厳ある帰還を可能にする環境づくりに本気で取り組むのであるなら、支援活動や人権監視に取り組む人たちを、全面的、無条件に受け入れなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2018年11月14日
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