- 2018年9月26日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:中国
- トピック:先住民族/少数民族
中国は、新疆ウイグル自治区のウイグル族など少数派に対する弾圧をやめ、推定100万人にのぼる人たちの拘束を解くべきである。
同自治区ではこの1年間、多くがイスラム教徒のウイグル族やカザフ族の住民多数が、「再教育施設」に収容され、教化、同化などを受けてきた。残された家族は、突然連行された夫あるいは妻や子どもがどこでどういう扱いを受けているのか、知る由もない。どこかに訴えたくとも、報復を恐れてそれもできない。家族の苦悩は、増すばかりだ。
国際社会は、この事態を静観せず、中国政府に対し、説明責任を果たすように迫るべきである。
アムネスティは、新疆自治区在住の家族や知人が行方不明になったという100人あまりの国外在留者、さらに再教育施設で過酷な扱いを受けたという元被収容者たちに、聞き取りをした。
大規模な拘束
新疆ウイグル自治区での弾圧が強化されたのは、昨年3月、同自治区に「反過激主義規則」なるものが適用されたことが契機だった。宗教的あるいは文化的な表現が公私の場を問わずに「過激主義」と見なされ、「普通でない」あごひげを生やす、ベールやヘッドスカーフを着用する、イスラム教やウイグルに関する本や記事の所持する、定期的な祈り、断食、禁酒などが、摘発の対象となっている。
海外、特にイスラム系の国での勉学、仕事、あるいは国外の人たちとの接触は、疑いの目を向けられ、老若男女問わず誰もが拘束対象となる。
顔認証ソフトやメールや通話の検閲など、監視の目はいたるところに張り巡らされ、プライバシー保護の技術を使ったメッセージアプリを使うだけでも、拘束理由になる。
中国当局は、被拘束者を留め置く施設を「教育による転向」のための施設と呼ぶ。罪を問われ裁判にかけられるわけではないため、弁護士はつかず、異議申し立てもできない。転向に抵抗すれば、罵声を浴びせられたり、暴行されたり、食事を与えらなかったり、個室に閉じ込められたりするという。いつ「転向」できたかの判断が当局次第のため、被収容者には、先が見えない日々が何カ月も続く。
中国当局は、テロ対策や治安確保のため非常手段もやむなしとするが、その手段は、特定の脅威を念頭に、極力、対象者を絞った限定的なものでなければならない。ところが、収容施設は、洗脳、拷問、処罰の場と化している。
引き裂かれる家族
新疆ウイグル自治区の家族の誰かが連行されると、国外在留者は、当初は事態の悪化を怖れて口外することをためらう。しかし、改善が一向に見えないため、進んで口を開くようになっている。
ある男性は、隣国カザフスタンに短期間滞在後、帰国した昨年10月、二重国籍を保持したなどとして拘束され、5カ月近く施設に入れられた。 拘束当初、目隠しをされ、体を器具で固定され、半日以上も身動きできなかった。6,000人ほどもいた被収容者全員で、中国共産党の歌や習近平氏賞賛の言葉を唱和させられた。私語は許されず、孤独と虐待の日々で、自殺への思いもよぎったという。
モスクワに留学中のカザフ族の女子学生は、父親が昨年末拘束されて以来、家族からの連絡が途絶えたという。「ごく普通の明るい家庭だったけど、あの時以来、笑顔が消えた。父がどこでどうしているのかもわからない」と不安を募らせた。
聞き取りをした多くの国外在留者は、自分が国外にいるために故郷の家族が疑いの目で見られていると考え、罪悪感を抱いてしまいがちだった。
当局は国外在留者が、過激な宗教思想やテロ活動に関係するとみられる国外の組織とつながっていると批判する。
そのため、新疆ウイグル自治区にいる家族は、余計な疑いを持たれないように国外にいる家族や親戚、友人などとの連絡をすべて断ち切っているという。電話はもちろん、SNSも使わない。その結果、連絡が絶たれた国外の人たちの不安は、尋常ではない。
また、両親が施設送りになると、残された子どもは、経済的にも追い詰められる。そのため、子どもが大きければ、国営の職業訓練所に入れられ、小さければ、昨年建設された福祉施設に収容される。
スパイ行為を迫られる
国外在住者をさらに追い詰めるのが、治安当局から働きかけられるスパイ行為だ。色よい返事をすれば、故郷の家族には寛大な措置が保証されるが、拒否でもしようものなら、「故郷の家族を拘束するぞ」と脅される。
さらにスパイの存在は、国外在留社会全体に猜疑心を広めることになり、孤立感や恐怖心に拍車をかける。
このように、中国当局は、国を挙げての弾圧により、新疆ウイグル自治区の住民数百万を深刻な状況に追い込んでいる。
当局は、収容施設の実態を明らかにし、収容されている人たちを家族の元に、速やかに送り返すべきである。
アムネスティ国際ニュース
2018年9月24日
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