- 2018年3月 8日
- [公開書簡]
- 国・地域:日本
- トピック:女性の権利
2018年3月8日
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
日本政府は「慰安婦」女性への誠実な対応を
アムネスティ・インターナショナル日本は国際女性デーを機に、日本政府に対し、旧日本軍性奴隷制の被害者であり、正義を求める女性たちに誠実に対応するよう、あらためて要請します。
1991年に被害者が韓国で初めて実名で名乗り出て、日本政府に対する裁判を起こしてから今年で26年になります。この間、勇気をもって声を上げてきた被害者たちによって、紛争下における女性への性暴力、重大な人権侵害が彼女たちに与えた心身の被害に取り組むことの国際社会の認識は高まりました。元「慰安婦」の声に世界中の女性が共鳴し、支援の輪も広がっています。しかし、生き残った被害者、故被害者、そしてその家族たちには、いまだに正義が果たされていません。
1932 年から第二次世界大戦中にかけて、旧日本軍は、アジア太平洋圏各地の女性たちを性奴隷としました。年齢、貧困、階級、家族の社会的地位、教育、国籍、 民族に基づいて、だましやすく罠に陥りやすい女性や少女らを標的にし、中には力ずくで連行された人もいます。全員が自由を奪われた中で性奴隷になることを強要され、生き残った女性たちは、身体的・精神的な病気や孤独、羞恥心、多くの場合は極度の貧困に苦しみ、現在もその苦しみは続いています。
日本政府は軍の性奴隷に関する賠償責任について、1951年サフランシスコ条約およびその後の二国間平和条約や協定によっての解決済みだと主張しています。しかし、アムネスティ・インターナショナルは、これらの条約や協定には性奴隷が含まれておらず、また個人が賠償を求める権利を排除していないことから、日本政府の立場を支持することはできないと考えます。
2015年12月28日、日本政府は当時の韓国政府との間で、10億円を国庫から拠出するなどして「最終的かつ不可逆的」な解決とすることを合意しました。しかし、交渉の場に被害者は不在で、合意について被害者は見解を述べることもできませんでした。そのため、この合意は被害者やその支援者の大多数から歓迎されず、「屈辱的だ」という声さえも上がりました。
合意は、韓国政府が今後決してこの問題を持ち出さないこと、旧日本軍による性奴隷制度の被害者を記憶するソウルの「平和の碑」を撤去することなども盛り込まれました。今年2月22日、国連の女子差別撤廃委員会で、韓国の鄭鉉栢・女性家族相が「性奴隷」との表現を使って日本軍「慰安婦」問題に言及し、26日に康京和外相が国連人権理事会の演説で問題を取り上げると、日本政府は即日抗議し、強制連行があったことも否定しました。
アムネスティ・インターナショナルは、日本政府の高官や公人が1932年から第二次世界大戦終戦までの旧日本軍による性奴隷制度の存在を否定する、あるいは同制度を許容範囲であるかのように正当化する言動を続けていることに抗議します。
「慰安婦」に対する組織的な戦争犯罪を葬ろうとする相も変らぬ姿勢が、被害者の屈辱と苦悩を長引かせ、彼女たちの尊厳の回復の妨げとなっています。性奴隷制が国際法上の犯罪であることを認め、後世に向けて歴史的事実として記録していくことは、将来決して同じ過ちを繰り返さないため、そして紛争下における性的暴力犯罪を不処罰にしないための重要な一歩となります。
世界の女性の人権運動は、女性の命と尊厳を踏みにじる性暴力をどこの国にも、どこの民族にもさせないために、国境を越えてつながっています。すべての国と人が女性に対する暴力や差別について考え、撲滅に向けた行動を起こすべき国際女性デーに、日本政府に以下を要請します。
- 国籍に関わらず、生存する被害者、故被害者、その家族を含め、日本軍性奴隷制の直接的な結果として被害を被ったあらゆる個人への十分かつ中身のある賠償を提供すること。
- 金銭賠償に加え、尊厳回復、社会復帰、無条件の謝罪、再発防止など、被害者たちが求める物心両面での賠償を提供すること。
- 賠償請求や裁判所への申し立てなどの権利を損なう施策は、すべて排除すること。
- 韓国政府その他の被害国の政府と協力し、これらの賠償措置を実施する実効性ある制度を設置すること。
- 歴史や公文書、日本の教育制度で使用される教科書に旧日本軍による性奴隷制度の正確な記載を行い、再発防止に努めること。
- 軍性奴隷制度の事実を否定または正当化しようとする政府関係者および公人の発言に反駁すること。
以上
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