- 2017年9月 9日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ロシア連邦
- トピック:女性の権利
ロシアの女性航海士、スヴェトラーナ・メドベージェワさん(31才)が、船長職の採用を取り消されたことを不服として、船会社を相手に起こした裁判が、8月31日に始まった。女性を差別する労働規制と闘ってきたメドベージェワさんにとって、今度こそ、差別的法規に風穴を開ける、またとない機会になる。
メドベージェワさんは長年、河川を航行する客船の船長になる夢を抱いてきた。2005年、サマラ州にある航海技師学校を卒業し、2012年にサマラ河川客船の船長職に応募した。一旦は決まった採用が、後になって取り消された。女性の就労を規制する労働法に違反するとの理由だった。
夢を捨てきれないメドベージェワさんは、船会社と国を相手に、船長職を勝ち取る闘いを始めた。一方、かつては女性の権利で先進国だったはずのロシアは、法規を盾に彼女の要求を拒み続けた。
メドベージェワさんは、河川客船会社を相手取り裁判を起こした。
ロシアの差別的な労働法は、列車の運転手、大工、トラック運転手、潜水士などの職種から女性を締め出してきた。女性に認めない専門職の数は、今では38業界、456種類にものぼる。いずれも、女性の健康、特に性と生殖の健康に「危険」、「有害」、「困難」だとしている。
そもそも、旧ソビエト時代に女性禁制が決められたこれらの専門職について、国は2000年に、雇用者が安全な労働環境を整える場合は、その限りではないとする政府規制162条を定めた。2012年の裁判では、メドベージェワさんは、同社が162条に則った労働条件を整備し、女性を採用できるようすべきだと訴えたが、主張は認められず、敗訴した。
翌年3月には、国連の女性差別撤廃委員会に「女性というだけで雇用を拒否された」と権利侵害を訴えた。
昨年2月25日、女性差別撤廃委員会はメドベージェワさんの主張を認め、補償を与え、メドベージェワさんが資格を持つ航海士の職を保障するようロシアに勧告した。
今年7月、ロシア最高裁判所は、裁判の再開を命じ、その命令を受けた裁判が8月31日に始まったというわけである。
ロシアは、1917年、欧州で最初に女性の参政権を認めた国である。1923年には世界初の女性大使を送り出し、また、女性宇宙飛行士でも世界初だった。
ロシア当局は、これまでの固定観念に終止符を打ち、これらの卓越した女性の開拓精神から学ぶできだ。
アムネスティは、ロシアに対し国連女性差別撤廃委員会の勧告を尊重し、政府規則162条を改正し、女性の雇用差別を全面的に撤廃することを求めている。
アムネスティ国際ニュース
2017年8月31日
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