- 2017年8月30日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フィリピン
- トピック:
8月24日に開かれた上院聴聞会で、「麻薬撲滅戦争」と呼ばれる麻薬掃討作戦で、警察が未成年者に対しても無謀な対応を変えず、多数の死者を出していることが明らかになった。
聴聞会では、高校生キアン・ロイド・デロス・サントスさん(17才)が先週、警察の手で殺された事件への対応が協議された。この事件に対して警察は正当防衛を主張しているが、殺害時の映像や目撃者の証言とは食い違っていたこともあり、国内外から激しい批判が沸き上がり、市民の警察への信頼が落ちるところまで落ちている。
市民の怒りを沈めるには、当局が、容疑者を容赦なく撃ち殺す作戦に終止符を打ち、法に則った捜査に徹するしかない。
上院聴聞会は、過去にも同じ問題を取り上げたことがあったが、当局を動かすまでには至らなかった。今回の聴聞会こそは、警察の捜査手法を抜本的に変える第一歩としなければならない。
昨年6月、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が就任し、麻薬犯罪対策に乗り出して以来、数千人が殺害されている。アムネスティは、犠牲者の多くが、超法規的処刑に当たる手段で殺されたこと、また、圧倒的多数の犠牲者が、最貧地区の住人であることなどの事実を調べ、公表してきた。
公聴会で、ヴィタリアノ・アギレ2世司法大臣は、高校生の殺害は「例外」であり、捜査には「巻き添えはつきものだ」と述べた。
しかし、「子どもの法的権利と開発センター」によれば、大統領就任後の1年間で、少なくとも31人の18才未満の若者が、警察や自警団に殺害されている。
司法大臣の発言は、無神経で冷淡なだけでなく、まったくの虚偽だった。殺害を前提とする捜査で、多数の未成年者が犠牲となっている事実に疑問の余地はなく、「麻薬撲滅戦争」をやめない限り、さらに犠牲者が増える。
サントスさんを殺した警官を特定し、法の裁きを受けさせなければならない。当然ながら、他の犠牲者についても、関係したすべての警官らを、同様に司法の手に委ねなければならない。
アムネスティは、オンブズマン事務所などの独立した機関による速やかで徹底した調査を、政府に強く求める。
アムネスティ国際ニュース
2017年8月24日
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