- 2017年8月18日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:インドネシア
- トピック:
インドネシアでは、今年に入って麻薬に関わっているとして警察に殺害されるケースが、少なくとも60人に上っている。アムネスティの調べでわかった。昨年は、年間で18人だった。
隣国フィリピンの「麻薬撲滅戦争」を見習っているのではないか、と思えなくもない事態だ。
当局が国内で増大する薬物犯罪に対処しなければならないのはわかる。かといって、容疑者を見つけ次第射殺するという対応は、断じて許されない。違法であるばかりか、薬物犯罪の根本にある問題に対し、何の解決にもならない。
警察が関係した殺害の多くが、薬物取引の拠点として知られる、首都ジャカルタやスマトラ周辺で起きている。
警察は、いずれの場合も、正当防衛か、容疑者が逃げようとしたためと主張している。8月に入って、すでに6人が犠牲になっているが、例えば、8月12日に西ジャワで殺害された50才の男性の場合、警察の言い分は、逮捕しようとしたとき、相手が銃に手を伸ばしたからだ、という。
とはいえ、アムネスティが認識している限り、当局は、これまでに殺害の真相究明に向け、第三者による調査をまったく行っていない。
1年前、当局の複数の幹部が、薬物関連の犯罪に対して、銃の使用など強硬手段を取るよう、提唱していた。
7月末には、ジョコ・ウィドド大統領が担当当局に次のように訴えた。「断固たる態度であたれ。特に、外国から来た麻薬密売人で、逮捕に抵抗する者に対しては、甘やかすのはもう十分だ。ただ撃て。情けは無用だ」。今年に入って殺害された60人超のうち、中国人3人を含む少なくとも8人が外国人であった。
8月には、国家警察長官も、麻薬密売人を追い払う例として、フィリピン警察を取り上げ、その対応を歓迎する発言をした。
フィリピンでは昨年6月、ドゥテルテ大統領が「麻薬撲滅戦争」を宣言したが、それ以降、警察や警察に雇われた者の手により、薬物使用や密売が疑われた数千人が殺された。警察が、まるで犯罪組織のようになっている状況だ。アムネスティは、その事例を調べ、報告してきた。
国際法もインドネシアの国内法も、警察の武器の使用は、最後の手段としてのみ認めている。その場合でも、犠牲者を極力出さないことが前提である。
薬物にからむ警察の殺害については、独立した機関により公正な調査がなされるべきである。違法性がある殺人を犯した警官は、裁かれなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2017年8月16日
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