- 2017年5月20日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:オーストラリア
- トピック:難民と移民
4月14日、マヌス島の難民収容施設を直接狙った発砲があったことが、写真とビデオで明らかになった。これは難民と庇護希望者の生命を危険にさらすものだ。
オーストラリア入国管理局とパプアニューギニア警察は、兵士が空に向けて発砲したに過ぎない、との見解を示した。
アムネスティの調べでは、当日の発砲は空に向けられたものだけでなく、難民収容施設に狙いを定めたものもあったのは、間違いない。
収容施設での事件は、今回が初めてではない。マヌス島に閉じ込められている難民は、過去に複数回、暴力的な攻撃に見舞われてきた。暴力と隣り合わせの日常は、オーストラリア政府が導入した、人権を軽視した制度が生む必然的結果だった。収容されている難民たちは、この制度が廃止され、安全な場所に移されるまで、引き続き生命の危険にさらされることになる。
アムネスティは、実際には何が起こったのか、独立の立場で効果的、公正な調査を迅速に行うことを求めている。
発砲から1カ月経ったが、オーストラリア政府は、事件の調査を怠り、公式声明も発表せず、独立した機関が確認・分析するための、監視カメラの映像も公開していない。
被害者を責める
オーストラリアのピーター・ダットン移民大臣は、発砲事件が数週間前に10才の少年が収容施設に入りこんだことに関連しているような発言をした。その子どもが危険にさらされていたためだと言わんばかりだったが、関連付けには何の根拠もなく、事の重大さをごまかそうとしたものだ。
同大臣は調査の結果を待たずに、発砲事件に関し無責任で事実無根の主張を展開し、問題を悪化させている。
マヌス島の難民は、事実無根の当てこすりを言ったり、主張をするこの大臣の手口に、ショックと失望を隠せない。アフガニスタンからの難民(男性)は、この少年が食べ物とお金を欲しがったので、友人と共に何がしかの食べ物をあげただけだと、話した。
アフガニスタンからの難民(34才)は、オーストラリア放送に次にように語った。「私は飢えも、渇きも、貧困も経験した。だから子どもが空腹の時にどう感じるか、よく分かっている。そのような子どもを前にして、手を差し伸べずに知らん顔をするなんてことはできない」
マヌス島の難民たちは、収容所の警備員と監視カメラの映像が、自分たちの説明を裏付けてくれる、と言う。
大臣の発言は、政府高官の名に値しない、恥知らずの行為である。その子どものことを数週間後の、酒に酔った兵士たちが収容施設に向けて発砲したことに結び付けるとは、あまりに無理があり、難民の身をさらなる危険にさらすことになる。
難民たちは今、ダットン大臣の見解についてオーストラリア当局に正式に苦情を申し立て、自分たちの潔白を証明する監視カメラの映像を公開するよう当局に要請している。
一刻も早い施設閉鎖と難民の安全確保を
昨年、パプアニューギニア最高裁は、マヌス島難民収容施設が違法に運営されているとの判決を下した。それを受けてオーストラリア政府は、今年後半には施設を閉鎖すると発表した。
しかし施設が閉鎖され、安全な場所に移送されるまでは、難民と庇護希望者は暴力の脅威にさらされ続ける。アムネスティは、オーストラリア政府に対し、直ちにその行動を起こすことを求める。
背景情報:危険と隣り合わせの難民
2013年10月18日、パプアニューギニア警察と兵士の戦闘が、難民収容施設のすぐ外で起こった。2014年2月16日、17日には、施設がパプアニューギニア人に襲われ、庇護希望者が1名殺害され、60名以上が負傷した。
アムネスティ国際ニュース
2017年5月14日
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