- 2017年5月11日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:インドネシア
- トピック:企業の社会的責任
インドネシア政府は、同国のパーム油産業における人権侵害を調査する委員会を設置するという約束を果たすべきである。
アムネスティは昨年11月、パーム油生産・販売で世界最大手のウイルマー・インターナショナルの子会社や仕入先がインドネシアで営む農園での労働搾取の実態を調べ、まとめた報告書を公表した。
人権侵害にはさまざまな事例があった。極端に高いノルマを課されて長時間働かざるをえなかったり、長時間労働に不満を言う女性が、そもそも低い賃金をさらに引き下げると脅されたり、わずか8才ほどの子どもが危険で過酷な労働をさせられたりしていた。また、毒性の強い除草剤の使用で、労働者が深刻な中毒症状を発症していた。
パーム油産業は、同国にとって経済の牽引役であり、労働者にとっても大事な生計手段だ。国際人権基準を満たしていない企業の存在は、国のイメージを損ない、目指す経済成長の足かせになりかねない。
アムネスティは、ウイルマー社が労働者や労働組合員に対し、アムネスティの調査の結果を否定するよう圧力を加えているという、驚くべき報告も受けている。
報告から4カ月経ったが、政府はいまだに何の対応も取っていない。即時に、委員会を立ち上げ、パーム油農園の労働者に対する人権侵害の調査を開始すべきだ。
政府は、調査委員会を設置すると発表しているが、誰をトップに置くのか、どう機能させるのか、どういう成果を出すのか、といったことには触れていない。
労働省は、調査委員会の詳細を明らかにすべきだ。人権侵害の調査に実効性を持たせるには、調査過程の透明性が欠かせないからだ。
全過程の透明性の実現には、法規の違反を監視する調査官の大幅な増員が必要であり、また、捜査、起訴、罰則などの情報公開も必須だ。
アムネスティはさらに、EU諸国に対し自国内の企業を指導し、原材料・商品調達における国際基準順守を徹底させるよう求めている。
今月、パーム油生産国協議会とEU諸国との会議が開かれる。開催にあたり、アムネスティはEUに対し、輸入されたパーム油が、労働搾取とは無関係であることを確認するよう求めている。
強制労働に終止符を打つ責任は、ウイルマー社であれ、その取引企業であれ、パーム油産業に関わるすべての企業にある。パーム油生産に直接関わっていないからといって、人権侵害に無関心であることは許されない。
アムネスティ国際ニュース
2017年5月1日
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