- 2017年1月10日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラク
- トピック:武器貿易条約
イラクでは、名目上軍の一部として活動する準軍事組織の民兵が、「イスラム国」と自称する武装組織との戦闘にも参加し、戦争犯罪や報復攻撃などの残虐行為を犯している。そして、そこでは、イラク軍が保有する米国、欧州、ロシア、イラン製などの武器が使用されていることが、アムネスティの調査で明らかになった。
アムネスティは2014年6月以降、現地調査や専門家による写真や映像分析を行ってきた。その結果、民兵らは16カ国以上で製造された装備や武器を使用していることがわかった。その中には、さまざまな小型武器だけでなく、戦車や大砲も含まれていた。
シーア派が多数を占める民兵らは、これらの武器や装備を使って、数千人の、主にスンニ派の男性・少年に対する強制失踪、拉致、拷問、超法規的処刑などを行い、家屋を破壊している。
イラクに武器を販売する国は、民兵の悪質な人権侵害に使用されないよう、十分な措置を取らなければならない。それができないなら、武器を提供してはならない。
2014年半ばに「イスラム国」との戦闘を支援するために設立された「人民動員部隊」(PMU)は、40から50の民兵組織から構成されている。2016年、PMUは正式に軍の一部となった。
今回、アムネスティは重大な人権侵害を犯している主要な民兵組織4つを調べ、2014年以来、PMUの民兵組織がどのようにして権力と影響力を拡大させたかを報告書にまとめた。民兵らは、政府から武器と俸給を受け、だんだんとイラク部隊と戦闘に参加する頻度を増やし、検問所を管理するようになった。このお墨付きにかこつけ、PMUの一部がスンニ派のアラブ人に報復攻撃を行ったが、誰も責任を問われることはなかった。
このような重大な人権侵害、戦争犯罪を許す背景には、武器や俸給を提供する当局の存在がある。イラクはそのことをよく認識すべきである。
軍と共に闘う民兵の一人ひとりひとりは、その行動の責任を厳格に問われなければならない。重大な人権侵害の疑いがあるなら、ただちに戦闘要員から外した上で、司法捜査と起訴手続きを取るべきだ。捜査や規則に従わない民兵組織は、軍が指導し、組織の規律を正すか、あるいは武装解除させなければならない。
「イスラム国」は支配地域で残虐行為を続け、被支配地域でも民間人を容赦なく攻撃対象にしてきた。イラク政府が受ける脅威は計り知れない。とはいえ、脅威への対応は、国際人権法・人道法を順守するものでなければならない。
イラクは、残虐行為を助長する武器の移転や転用を厳しく規制する武器貿易条約に直ちに加入すべきである。
アムネスティ国際ニュース
2017年1月5日
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