- 2016年12月23日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フランス
- トピック:「テロとの闘い」における人権侵害
12月15日、フランスの議会は国家非常事態をさらに7か月延長する法案を採択した。このような動きは例外的な措置を常態化し、人権を脅かし法の支配を弱体化させるおそれがある。現行の非常事態宣言は来年の1月26日で期限を迎えるが、今回の延長で非常事態が20カ月続くことになる。
延長するたびに、徐々に非常事態が日常化する。これは法の支配にもとづく民主主義にとって危険である。確かにテロの脅威はしばらく続くものと思われるが、当局はこのような例外的措置への依存状態を見直し、通常の法的枠組みに戻って対応すべきである。
ルー内務大臣はテロの脅威は依然として極めて高いとして、非常事態の延長を正当化した。また、来年4月から7月にかけての大統領と議員の選挙の期間中に、テロが発生する可能性があると語った。
12月6日現在、自宅軟禁にある95名のうち37名が1年以上軟禁されたままだ。
政府は自宅軟禁の適用に対する保護措置をもっと強化し、非常時の権力行使は必要最小限にすべきだ。同時に非常事態の出口を用意しておく必要性を広く議論すべきだ。
2015年11月にパリで発生したテロ事件から数時間後、オランド大統領は非常事態を宣言した。この時、1955年成立の非常事態法を発令したが、この法律は、内務大臣と自治体の役人に、裁判所の許可なしに家屋や敷地内を捜査し、被疑者の移動を制限する強力な権限を付与する。
非常事態の適用状況を監視する委員会によれば、2015年11月の事件以来、法執行機関が非常事態宣言に基づいて行った令状なしの家宅捜査は、4,292回であり、自宅軟禁は612人を記録した。しかし、テロ関連の犯罪捜査に結び付いたのは、わずか61件だった。この中にはテロ事件に関係する犯罪容疑などというあいまいな規定にもとづく捜査で摘発した20件も含む。
したがって、「非常事態」という例外的な措置にどれほど有効性があるのか、強い疑問を持たざるを得ない。非常事態時の権限が行使されてはいるが、起訴件数は通常の手続きに比べて少なかった。
委員会の報告ですら、非常事態法での家宅捜査は、検察のテロ対策ユニットの実績への貢献はわずかだったとしている。
行政訴訟の最高裁判所である国務院は、今年2月の2回目の非常事態の延長の際、本来は一時的な非常事態を存続させることになると警告した。
この延長は、通常の治安問題を「非常事態」に変えてしまう恐れがある。ほぼチェックされることもない、現行の極めて過度で無差別な権限の行使により、甚大な人権侵害を引き起こしかねない。
アムネスティ国際ニュース
2016年12月15日
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