- 2016年12月16日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:朝鮮民主主義人民共和国
- トピック:
北朝鮮における一連の政治囚収容所の衛星画像を見ると、政府は引き続きこれらの抑圧的施設を維持し、強化していることがわかる。これらの収容所は、政治的抑圧と社会的規制を推し進めるための強力な基盤を形成しており、広範かつ組織的な人権侵害を可能にしている。5月と8月に撮影された2つの政治囚収容所の衛星画像によると、新たに監視所が設置され、火葬場らしき施設が拡充され、農作業が稼働している様子がわかる。
アムネスティは、人権侵害に関する国連の調査委員会の報告書(2014年)が公表されて以後の、第15号政治囚収容所(ヨドク)と第25号政治囚収容所の2カ所の実態を知るために、調査を実施した。同報告書によれば、北朝鮮における人権侵害の程度、規模および内容は、現代の世界で例のないものだった。
報告書によれば、当時各地の政治囚収容所に隔離されていた12万人もの男女や子どもに対し強かん、幼児殺害、拷問、計画的餓死、強制労働、処刑などが行われていたという。収容所に拘禁された人びとの多くは、犯罪を犯したわけではない。体制への脅威と見なされた人の家族が、連帯責任で処罰されているのだ。
分析した衛星画像は総合的には、前回確認した強制労働や拘禁の状況に変化はなく、残虐極まりない取り扱いに使用する施設は、同じように稼働している。
北朝鮮は、人権の監視や調査を目的とした入国を一貫して拒否しており、収容所をはじめとしたあらゆる地域で行なわれている人権侵害の調査ができない。しかし、アムネスティや国連調査委員会などの検証によれば、甚大な人権侵害を維持するために必要な施設も、衛星から確認できるほど巨大だということだ。アムネスティはこれまでと同様、高画質の衛星画像を活用して諸施設を検証し、これまでと変わらない政治囚収容所の維持と強化の実態を明らかにした。
清津(チョンジン)にある第25号政治囚収容所の衛星画像
(2016年8月4日付)
(c) 2016 DigitalGlobe,Inc.
大きな変化はないが、(c) 2016 DigitalGlobe,Inc.既存の41の守衛所が維持され、さらに6つの守衛所が新設されたことがわかる。また、火葬場と思われる施設の屋根が改修されているようであり、道路も南側と管理エリアから鉱山と思われる方へ3本が延長されている。こうしたことから依然としてここが拘禁施設として活発に稼働していることを示唆している。
・排水処理設備
(c) 2016 DigitalGlobe,Inc.
2014年末、衛星画像において排水処理設備とおぼしき施設の建設が確認されようになった。同時期に鉱山と製造工場らしきものも建てられた。排水処理設備がほとんどない北朝鮮では、これは特に目を引く。仮に、収容所の人口が増加し、これまでの衛生設備や技術では対処しきれなくなったのであれば、排水処理設備の新設が必要だったのかもしれない。伝染病のまん延等につながれば、強制労働を維持することができなくなるからだ。
・火葬場とおもわれる施設
(c) 2016 DigitalGlobe,Inc.
農業エリアに隣接。東側は壁で隔離され、壁囲いの端には守衛所がある。2014年以来この区域はだいぶ変化し、屋根が新しくなったりしているが、全体的に改築された可能性もある。
・農業
(c) 2016 DigitalGlobe,Inc.
居住棟群と工業区域を囲むようにある農地は依然稼働中であり、種々の農作物が混在してある。守衛所は相変わらず農地の真中に設置され、防護柵は少し動かされている。画像内の挿入写真は2016年5月8日のもので、防護柵の内側で農作業に従事する人が写っている。製造工場や鉱山らしきものも写っており、過酷な労働が今も続いていることを示している。
ヨドク政治囚収容所(第15号収容所)の衛星画像
(2016年8月22日付)
(c) 2016 DigitalGlobe,Inc.
この画像からは2014年12月から2016年8月にかけて、収容所全体で農作業が行われていることが確認できる。この間、農業や産業に関する29の施設が取り壊され、囚人の居住棟も14カ所、解体されている。観察したエリアでは管理棟、守衛所、そして防護柵は維持されており、ここが依然として拘禁施設として機能していると結論付けることができる。
変化をより正確に観察・記録するため、第15号収容所の画像分析は、南側の区域を9つに分けて行った。上の画像にある10番目のエリアの詳細は、WV1衛星ではとらえることができなかった。また、分析区域以外では活動がうかがえなかった。
・エリア1(左は2014年12月14日の画像)
(c) 2016 DigitalGlobe,Inc.
エリア1には、第15号収容所の主要な入り口があり、また守衛らの居住棟など収容所の運営を担う施設が集中している。2014年以降、建物の数などに変化は見られない。
・エリア3(左は2014年12月14日の画像)
(c) 2016 DigitalGlobe,Inc.
エリア3は農業のための区域である。家畜の囲い、脱穀装置、穀物倉などがある。2014年から若干の変化が見られる。穀物倉のうち2つがなくなっているが、これらはただ単に農作業をするうえでの季節的な変化に過ぎないかもしれない。家畜の囲いについて、北端の複合地帯にある小さめの施設がなくなっている。エリア3の最南端は囚人の収容施設と思われるが、この屋根が取り去られており、修繕あるいは解体が進められている模様である。
アムネスティ国際ニュース
2016年11月22日
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