- 2016年12月 8日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:EU
- トピック:企業の社会的責任
EU(欧州連合)は11月22日、企業による鉱物取引を正すべく、及び腰ながら前向きな一歩を踏み出した。欧州議会は、原産国で紛争や人権侵害の資金源になっている鉱物のEUへの輸入を禁止する紛争鉱物規制法に関する協議を終えた。この規制により特定のEU企業は、鉱物のサプライチェーンに対する責任を負い、紛争や人権侵害と関わる鉱物を取り扱わない措置を取ることが求められるようになる。
しかし、一連の譲歩がなされ土壇場で抜け穴を作った結果、数多くの企業が適用から除外され、規制法の効果が弱まる恐れがある。アムネスティやグローバル・ウイットネスなどの市民団体は、EUとその加盟国に対し、免責条項の盛り込みで同法の掲げる目標が損なわれないよう、本腰をいれて取り組むことを求めた。
「同法の採択は歓迎すべきだ」とグローバル・ウイットネスのマイケル・ギブは言う。「ただしEUは、小数の企業に強力なメッセージを送っている一方で、大多数の企業に関しては引き続き自主規制に委ねた。この信頼は正当であり当然であることを示せるかどうかは、企業次第である。議会は、信頼関係が崩れた場合の対応を考えておくべきだ」
EUは、鉱物の主要マーケットであり、ノートパソコンや携帯電話、貴金属からエンジンまで、鉱物を使った製品や原料を輸入している。
紛争鉱物規制法は、すべての国からEUに輸入される錫、タングステン、タンタル、金を対象としており、この種の法律としては初めて、全世界を視野に入れている。しかし、鉱物取引に関する国際基準が、すべての企業にサプライチェーンにおける紛争鉱物の有無を確認することを義務づけているのに対し、EUの規制が対象とするのは、鉱物を原材料として輸入する企業のみである。同じ鉱物を使ってる部品や完成品を扱う企業は、対象外である。さらに数カ国が、年間の輸入量が一定以上の場合のみを対象とすることを強く要求し、認められた。これにより、対象企業数はさらに減ることになる。
取引量による線引きは、大きな抜け道である。何百万ユーロもの鉱物が何のチェックも受けずEUに流入する恐れがある。その多くが、紛争に関わる可能性が非常に高い。今回の法制化は、規制への一歩に過ぎない。あらゆる企業がサプライチェーンを十分に確認することを義務付ける追加措置が必要である。
また新規制法は、すぐに施行されるわけではない。議会が長期にわたる段階的導入を選択したからである。
「段階的導入は、ごまかしに過ぎない。EU企業には過去何年分もの責任があり、規制法はそれを反映させたもの。企業は遵守する上で必要なツールや情報をすべて備えている。今は、企業が一刻も早く責任を果たすことに焦点を合わせるべきだ」とパワーシフトのマイケル・レックォードは述べた。
鉱物取引に関する規制法を制定しただけでは、紛争や人権侵害の元凶に苦しめられている原産地の人びとに、平和と繁栄をもたらすことはできない。したがって市民団体は、外交や開発面で同法を補完していくEUの統合アプローチを歓迎している。
アムネスティ国際ニュース
2016年11月22日
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