- 2016年12月 7日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フィリピン
- トピック:死刑廃止
フィリピンの国会議員は死刑制度復活法案に反対すべきである。死刑制度が復活すれば同国の人権の推進と擁護は大幅に後退する。また、果たすべき国際法上の義務に違反する。
現在下院の司法改革部会で法案が審議されているが、もし可決されれば、多種の犯罪に再び死刑が適用されることになる。手続きは迅速に進んでいると見られ、2016年末までには審議が終わる見込みだ。フィリピンは、これまでも廃止と復活を繰り返しているが、現在は死刑執行を禁止する国際条約の締約国であり、同国には国際的に死刑廃止が求められている。その義務は、締約国である限りいかなる場合でも守るべきである。
アムネスティは、いかなる状況においても、世界人権宣言で認められている生存権を侵害し、残虐かつ非人道的な究極の刑罰である死刑に反対する。裁判は、差別や誤審と無縁ではない。その司法制度下で科され執行される死刑は、取り返しのつかない刑罰である。
現在、死刑制度を廃止する国が増える一方で、法律上または事実上、死刑廃止に踏み切った国は今や141カ国に上る。そうした中での死刑制度の復活の動きは、廃止に向かう国際的な潮流にまったく逆行する。また、移住労働者など国外で暮らすフィリピン国籍者に科された死刑判決に減刑を要請してきたという心強い実績を、台無しにするものである。他国で死刑判決を受けた人びとにとって、法的支援と政治的圧力が権利を守る力となってきたことは間違いない。
提案中の法案では薬物犯罪など、故意の殺人以外の犯罪でも死刑になりうる。国際法に照らせば、死刑制度を維持するとしてもその対象は、故意の殺人のみとすべきである。
死刑に犯罪抑止効果があるという説には説得力ある根拠はなく、また死刑を廃止した国々の統計では、死刑がなくなったからといって、それまで死刑の対象になっていた犯罪が増加したという傾向は見られなかった。
アムネスティは、フィリピン下院の司法改革部会の議員に対して、また広く全国会議員に対して、本法案を全面的に否決するよう要請する。
アムネスティ国際ニュース
2016年11月25日
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