- 2016年11月11日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、福岡拘置所の田尻賢一さんに死刑が執行されたことに対して強く抗議する。
金田勝年法務大臣にとって今年8月の就任後、初の死刑執行である。わずか3カ月の職務において、死刑という極刑を遂行するだけの慎重な判断ができたのか疑問が残る。今年に入り、3月25日には2名が処刑されており、この執行で計3名の命が奪われた。安倍政権下では、2006年の第一次安倍内閣と合わせると27人が処刑されたことになる。
田尻さんの事件は熊本地裁において裁判員裁判によって死刑判決が下されたものである。通常死刑事件においては最高裁まで争うものだが、田尻さんは最高裁において自ら上告を取り下げたため、死刑が確定した。現行の制度では、人の生命を奪うという究極の人権侵害である死刑を最高裁において議論を尽くすことなく確定し、そのまま執行することが可能となっている。えん罪の可能性や捜査の問題など、あらゆる点を慎重に判断することこそ、刑事手続きにおける適正手続を実現し政府の国民に対する人権侵害を防ぐことができるのであって、現行の制度は国民の命を軽視するものである。
第71回国連総会において、「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が今年12月に採択される見込みである。この決議は、2007年から過去5回にわたり圧倒的な賛成国多数で採択されており、今年も同様とみられる。今回の死刑執行は、こうした死刑廃止に向かう世界の潮流に逆行するもので、数々の国際機関の勧告にも誠実に向き合わず死刑制度を維持しようとする日本政府の姿勢は、国際社会に対する挑戦だと受け止められかねない。
今年10月には、日本弁護士連合会が人権大会において死刑廃止宣言を初めて採択しており、市民社会でも死刑制度に対する関心が高まっている。今後、死刑についての全社会的な議論は避けられない。日本政府はむしろその動きを主導すべきであり、それには死刑制度に対する情報公開が不可欠である。
死刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的な、人の尊厳を傷つける刑罰である。アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止への第一歩として公式に死刑の執行停止措置を導入し、全社会的な議論を速やかに開始することを要請する。
2016年11月11日
アムネスティ・インターナショナル日本
※死刑執行抗議声明における「敬称」について アムネスティ日本は、現在、ニュースリリースや公式声明などで使用する敬称を、原則として「さん」に統一しています。また、人権擁護団体として、人間はす べて平等であるという原則に基づいて活動しており、死刑確定者とその他の人々を差別しない、差別してはならない、という立場に立っています。そのため、死刑確定者や執行された人の敬称も原則として「さん」を使用しています。
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