- 2016年11月 9日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シリア
- トピック:地域紛争
人道的理由による戦闘の中断が、11月4日に終了し、ロシアの支援を受けたシリア政府軍と武装グループの戦闘の再開が迫っている。戦闘激化も予想される中、アレッポの市民が戦禍に巻き込まれる恐れが高まっている。
報道によると、この数日、ロシアの軍艦がシリア沿岸のラタキアに向け航行中だ。シリアとロシアの両軍が、アレッポの制圧に向けた総攻撃を準備している模様だ。
戦時中であれ、すべての当事者が従うべき基本的な決まりがある。民間人を故意に攻撃してはならない。人口密集する地域を無差別に爆撃してはならない。シリア政府軍はこれまで、アレッポ東部のみならず全土で、市民数万人を殺害するという、国際法違反をしてきた。また、反政府武装グループも、アレッポ西部をはじめ各地の一般住宅街を無差別に爆撃してきた。
ここ数カ月間のアレッポ東部の破壊の規模は、凄まじいものだった。アレッポでの、特に政府軍の戦闘の経緯からすると、アレッポ制圧に向けさらに攻撃を強化する可能性があり、きわめて多数の市民が巻き込まれる恐れがある。
アムネスティの調べで明らかだが、これまで政府軍はアレッポ東部の攻撃で、市民を攻撃対象からはずすどころか、非合法のクラスター爆弾などで市民を殺傷して、臆面もなく国際人道法を破ってきた。アレッポ西部でも武装グループが、迫撃砲やカチューシャロケット(自走式多連装ロケット砲)など狙いが不正確で違法な武器での攻撃を繰り返し、市民が危険にさらされてきた。
住民も攻撃が身近に迫っている恐怖を語っていた。ある女性住民は、嵐の前の静けさだ、と震えていた。
「地獄絵図が再び展開するのは時間の問題。人道的な戦闘中断が発表されたとき、心臓が止まった。このあとは空爆なんだ、と」
別の住民は次のように語った。「攻撃は前より激しくなるのではないかと心配だ。逃げ隠れする場所もない。軍の爆弾は、地下室も何もかもめちゃくちゃにしてしまう」
ロシアが発表した一時的戦闘中断で、市民に対する人道的支援が行なわれたわけでもなく、空爆再開時に長期的な市民保護を約束したものでもなかった。市民が避難を希望すれば、制限なく認められなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2016年11月4日
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