- 2016年11月 5日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イタリア
- トピック:難民と移民
EUがイタリアに対し難民や移民への厳しい態度を求める中、同国で、難民・移民への殴打、電気ショック、性的嫌がらせなどの暴行事件や違法な排斥が横行している。
昨年、欧州委員会の勧告で、最初の入国地にEU運営の受付センター「ホットスポット」を設けて審査・登録などを行うという取り組みが導入された。その結果、庇護を求める権利が損なわれるばかりか、人権侵害も激化している。
この政策は、イタリアなどEUの入口にあたる国に到着した難民らの本人確認、指紋採取、保護必要性の判断、難民申請を受理するか送還するかの判断などを迅速に行うことが狙いだった。アムネスティは、難民や移民170人以上に聞き取りし、手続きの各段階で重大な問題があることが分かった。
表向きはEUの入り口となる国の負担を軽減する取り組みだが、庇護希望者を別のEU国へ再配置する狙いもある。しかし、この取り組みがもくろむ連帯は、幻想に過ぎなかったことも分かってきた。イタリアは、当初、4万人を他の国で受け入れると約束されていたが、これまでに実現したのはそのうちの1200人に過ぎなかった。しかも、この1年で、15万を超える人びとが新たに同国に流入している。
強制的な指紋採取
EU諸国と関係機関の圧力を受け、イタリアは強制的な指紋採取に踏み切った。アムネスティは、入国した難民は性別や年齢にかかわらず指紋採取を強要され、拘禁、脅迫、過度の力の行使を受けたという証言を数多く得た。
虐待を受けたという証言24件のうち、16件は暴行だった。電気ショック警棒を使われたという証言も数件あった。男性1人と少年1人は、性的嫌がらせをうけ、性器を痛めつけられたと訴えた。これらの内容は、重大な問題であり、第三者による調査が必要である。
選別
「ホットスポット」では、イタリアに到着すると、まず庇護希望者と不法移民を区別される。国を逃れ道中で疲弊し、難民手続きの情報も助言も十分に受けられない人びとが、彼らの将来に深く関わる質問に答えなければならないのだ。
警察は、新しく到着した人びとに、なぜ庇護を希望するのかと聞けばいいところを、なぜイタリアに来たのかと質問して、その答えを求められる。難民としての地位は、入国理由ではなく、帰国で直面する状況で決められるものであるため、このやり方には根本的に不備がある。
追放
EUからの圧力を受け、イタリアは、元の国へと送り返す人数を増やそうとしている。そのために、残虐行為を行っている国との再入国交渉も行っている。
このような覚書の一つが、8月、イタリアとスーダンの警察関係者間で調印された。これにより、追放後に、スーダンでも簡略な本人確認手続きができるようになった。本人確認がイタリアで行われたとしてもそれ以上ではなく、あまりに多くをスーダン当局に任せているので、帰国したときに重大な人権侵害を受ける危険性がないのか、一人ひとりについて判断することはできない。
欧州諸国は、自国の管轄から人びとを排除することができても、国際法に定められた義務から逃れることはできない。イタリアは暴力行為に歯止めをかけ、難民を、身に危険が迫る国へ送還しないことを保障しなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2016年11月3日
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