- 2016年10月21日
- [公開書簡]
- 国・地域:フィリピン
- トピック:
2016年10月21日
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 若林 秀樹
フィリピン共和国大統領訪日時に超法規的措置を停止するよう求める要請書
フィリピンでは、薬物犯罪の取り締まりのために、適正手続に基づくことなく多くの市民の命が奪われています。アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府が、今月中に訪日予定のドゥテルテ新大統領に対して国際人権法に反する超法規的処刑をただちにやめるよう働きかけることを要請します。
今年6月30日に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、薬物犯罪を厳しく取り締まることを公約に掲げ、就任直後から警察や自警団による容疑者の殺害事件が相次いでいます。
フィリピン当局や報道によれば、9月20日時点で少なくとも3000人以上が殺害されました。この中には、逮捕時に抵抗したために警察に殺害された人や、自警団に殺害された人が含まれています。このような殺害は超法規的な処刑であり、国際法により明確に禁止され、またフィリピン国内法にも反しています。国連の「法執行官のための行動綱領」は、警察官は人権を保障する措置をとらなければならず、武力の行使は絶対的に必要な場合に限ると定めています。
また、アムネスティの調査では、薬物犯罪に関与していない市民が巻き込まれていることがすでに明らかになっています。警察署や、家宅捜索中の自宅で、薬物犯罪の容疑者とされただけでその場で射殺された人たちもいました。
こうした状況に国際社会の批判は高まっていますが、ドゥテルテ大統領は超法規的処刑をやめる姿勢をまったく見せていません。
9月30日、大統領は演説の中で、「ヒトラーは300万人のユダヤ人を虐殺した。(フィリピンには)300万人の麻薬中毒者がいる」「私は彼らを喜んで虐殺する。少なくともドイツにはヒトラーがいた。フィリピンにも(私が)いる」とさえ述べました。その後、フィリピン政府報道官は、フィリピンの薬物犯罪容疑者殺害は警察による正当な取り締まりの結果であって、あくまで違法なものではないと述べています。
しかし、政府が恣意的に市民の命を奪い、逮捕し、法律で定める手続きによらず取り締まることはフィリピンの国内法や国際法上認められず、違法な取り締まりにあたります。
日本政府は「人権外交」を掲げており、フィリピン政府への働きかけが期待されます。それゆえアムネスティ日本は、ドゥテルテ大統領の訪日に際して以下3点を日本政府に要請いたします。
- フィリピン当局による超法規的処刑やその他違法な殺害に強い懸念を表明し、法執行官が武力を行使する場合は国際法と国際基準を遵守するよう要請すること。
- これまでの警察による致死的武力行使、超法規的処刑、違法殺害について、迅速かつ独立した捜査を行い、加害者が公正な裁判手続によって裁かれるよう要請すること。
- 第三者による警察監視機関を設けて警察官の行動を監視し、証人の安全を確保し、透明性と説明責任のルールが十分に機能するよう要請すること。
以上
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