- 2016年9月 2日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ミャンマー(ビルマ)
- トピック:先住民族/少数民族
ビルマ(ミャンマー)は8月24日、ラカイン州でのさまざまな課題解決に向け提言を行う委員会を設置し、その委員長にアナン前国連事務総長を起用すると発表した。この決定は、同州の人権状況の改善に向けた取り組みへの一歩として、歓迎したい。
政府が、この問題を深刻に受け止めている表れである。ただし、委員会は、その州民全員の人権が保障される道筋を作ることができてはじめて、評価に値する。
同国西沿岸部に位置するラカイン州には、いくつもの少数民族が暮らしている。少数民族、特にロヒンギャの人びとは、何十年も人権侵害を受けてきた。状況は、2012年以降ますます悪化し、民族同士の衝突と暴力が後を絶たず、多数の死者を出し、物が破壊され、大勢が自宅を追われた。
委員会は、このような少数民族への差別状況を調査し、その調査結果を開示し、補償を勧告し、和解に向けた取り組みを主導すべきである。国営メディアが国の組織と報じたラカイン州諮問委員会は、アナン前国連事務総長とアウンサンスーチー国家顧問が舵をとることで、長年続く人権問題の取り組みに、これまでで最も信頼性と独立性が高い試みとなるであろう。
委員会は、国外の委員3人と国内の委員6人から成る。国内委員は、仏教とイスラム教の両者の代表も含まれる。国外から委員を加えたことは、状況が一国では収まらない問題であることを示しているのであろう。ただし、ロヒンギャなど他の民族的・宗教的少数派が加わっていれば、委員会はより有効であっただろう。
主にラカイン州に居住するロヒンギャは、長年さまざまな差別を受け、人権も否定されてきた。ラカイン民族、カマンムスリム、キリスト教徒、ヒンドゥー教徒などの少数派も同様である。
委員会は、衝突の防止、人道的支援、権利と和解、必要な体制の整備と充実など、幅広く取り組むとしているが、これ以上の機能を与えられるのかは、現在のところ明らかではない。委員会は、1年後に所見をまとめた報告書を政府に提出することになっている。
委員会が、真の意味で実効性を発揮するには、同州での人権侵害を独立・中立の立場で徹底して調査することが必須である。これが実現してはじめて、同国は、さまざまな課題への責任を果たし、ロヒンギャの人びとが受けてきた差別解消への取り組みが可能になる。
とはいえ委員会は、ロヒンギャや他のイスラム教徒の権利や尊厳を回復するために、今すぐに何らかの行動を起こす必要はない。まずは移動の自由の制限を撤廃し、教育、雇用、支援を得られるようにすることから始めるのがよいだろう。
アムネスティ国際ニュース
2016年8月24日
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