- 2016年6月 1日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:アフガニスタン
- トピック:難民と移民
多くのアフガニスタン人が、暴力を逃れてもそのまま自国にとどまらざるを得ず、生存レベルぎりぎりの状態で暮らしている。その数はこの3年間のあいだになんと2倍も増加した。アムネスティ・インターナショナルは、最新の報告書でこの問題を取り上げた。
アフガニスタンの国内避難民は今日120万という大変な数にのぼり、2013年の約50万人と比べて大幅に増加している。また、国を逃れて暮らすアフガニスタン市民も推定260万人おり、世界で最も多くの難民を出している国のひとつとなっている。
アムネスティの調査によれば、歴代のアフガン政府の約束にもかかわらず、国内避難民には相変わらず十分な仮設住居、食料、水、保健サービスが供給されず、教育や雇用の機会も与えられていない。
強制立ち退き
昨年6月18日のラマダン初日、武装した軍人風の男たちの一団がカブールの難民キャンプにやってきて、仮設の住まいをブルドーザーで壊すと脅した。年配の男性がこの強制立ち退きに抗議して、近くにいた警官らに破壊をやめさせようと訴えた。男性は武装集団に殴られたため抗議デモが起こった。
住民の証言によると、これに呼応して警察と武装集団が国内避難民の人びとに発砲し、2人が死亡、10人が怪我をした。怪我人には、12才の少年もいた。事件の捜査は行われず、誰も責任を問われることはなかった。
生存レベルぎりぎりの生活
国内避難民の居住区のほとんどは、基本的な保健設備も整っていない。NGOや政府が運営する移動クリニックがときどき回って来るだけなので、国内避難民は彼らの支払い能力を超える私費の医療に頼るしかない場合も多い。
国内避難民は安定した収入源がないため多額の借金を抱えていることも多い。ある父親の話によると、息子の手術費用を払うために20,000アフガニ(292米ドル)を借りなければならなかったという。
また家を逃れざるを得なかったため、国内避難民の子どもたちは教育を中断され、大人は慢性的な失業状態に陥っている。
国内避難民家族の経済的負担は重くなっている。昔からの生計手段を失い、たまに非正規の仕事があるくらいだから、女性は排除され、子どもたちは搾取され教育を受けられないという事態になっている。
実行の伴わない国内避難民政策
2014年度の国連の「国内避難民政策」は文書の上では国内避難民の権利を明記し、アフガニスタンがそれを実施するための具体的な行動計画を定めている。だが同国はその約束を果たせず、今のところ国内避難民はほとんど何の恩恵も受けていない。
実行できない理由はいろいろあるが、ひとつには国内避難民に関して、アフガン政府には能力も知識も著しく欠けているという点がある。
それと同時に国際社会も、アフガン政府が対応できない部分にできるだけ介入するといった手立てを講じていない。また、世界の関心と財政支援が他の危機的状況に集まっているため、アフガニスタンへの援助は先細りになっている。国連は2016年度アフガニスタンへの人道支援として3.93億米ドルの拠出を要請したが、これはこの国の悲惨な人道的状況にもかかわらずここ何年かで最少額である。5月までに寄せられた拠出金はその4分の1にも満たない。
勧告
アムネスティは、「国内避難民政策」の実施を優先的に行い、その実現に向けて国を挙げて十分な手立てを講ずるようアフガン政府に要請する。
またアフガニスタンで活動する主要国際団体等も、国内避難民の人権を守るためにさらに努力し、「国内避難民政策」の実施に向けて一段と影響力、ノウハウ、資力を傾ける必要がある。
アフガニスタンと世界は、手遅れにならないうちに今すぐこの国の国内避難民問題を終わらせなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2016年5月31日
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