- 2016年4月12日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ケニア
- トピック:
国際刑事裁判所(ICC)は4月5日、ケニアのウィリアム・ルト副大統領とラジオ・パーソナリティのジョシュヤ・サング氏に対する訴追を無効とした。これにより、2007年から翌年にかけての大規模な人権侵害に対する公正な裁判と犠牲者への補償がとん挫するようなことがあってはならない。当時、大統領選の結果をめぐり、住民多数を巻き込む殺害や強制退去などが発生し、2人は一連の行為に荷担したとして、人道に対する罪に問われていた。
ただし、国際刑事裁判所(ICC)第一審裁判部は、訴追無効は将来検察官による再訴追の権利を侵害するものではないと裁定した。また、今回の判断を検察局が上訴する可能性にも触れた。
今回の判断は、長い間正義の実現を待ちかねていた何千という犠牲者にとって、大幅な後退とみられるだろう。
だが犠牲者にとって、これで何もかも終わったというわけではない。両名が無罪になったわけでもなく、ICCあるいはケニア国内の司法はこの事件を再び訴追できる。犠牲者は将来この犯罪に対して正当な償いを求めることはできるはずである。したがってアムネスティ・インターナショナルは、当時の人権侵害で訴追された者たちに裁きを受けさせるよう、あらためて要請する。裁きの場はケニア国内の法廷も考えられる。また、証言者への妨害が審理に影響を与えた事実を裁判官が認めていることを歓迎し、妨害に関与した者を裁くことも求める。
検察局の起訴状提出の後にICCが訴追無効を決定したのは、今回が初めてである。しかし、証言妨害や国の非協力などの申し立てがある中で、訴追が見送られたのは初めてではない。大統領選にからむ人権侵害では、ケニヤッタ大統領ら他の4人も人道に対する罪で起訴されたが、裁判に至らなかった。
ICCは捜査の質と能力を強化し、犠牲者や証言者の保護にいっそう努めるべきだ。またICCの捜査を妨害したり非協力的な政府に対しては、国際的な圧力を強めるべきである。諸外国も、ケニアでの人道に対する罪に普遍的管轄権を適用するよう求めていくべきだ。
背景情報
第一審裁判部の裁判官の多くは、将来本件を再起訴する検察の権利を損ねることなく、被告に対する訴追を無効とし、被告を放免するべきだと判断した。ただし裁判官により、証言妨害と政治的介入による審理は無効、被疑者2人を容疑者とするには証拠不十分、いや証拠は十分、などと意見は分かれた。
ルト副大統領は、殺人、強制退去、迫害、住民の強制移住などに間接的に加担したとして、人道に対する罪で起訴された。ジョシュア・サング氏は、これらの犯罪の幇助容疑で起訴された。
容疑は、2007年12月の大統領選後の事態に関わるものだ。このとき現職の大統領が、対立候補が票を盗まれたと抗議するなかで勝利宣言をした。
現職が就任式を強行したため、暴動や衝突が勃発、1,200人以上が死亡し、35万を超える人びとが自宅から避難せざるをえなかった。
アムネスティ国際ニュース
2016年4月5日
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