- 2016年4月 2日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:トルコ
- トピック:難民と移民
多数のシリア難民が強制的に戦禍の母国に送り返されている。これは、3月に交わされたEU・トルコ協定に問題があることを浮き彫りにしている。
アムネスティがトルコ南部の国境で調査した結果、トルコ政府は、1月中旬以降、毎日のように男女や子ども100人前後のシリア難民を一斉に拘束し、追放していたことがわかった。アムネスティは3月末の3日間で、トルコのハタヤ県から大量の難民がシリアに強制送還させられていたという複数の証言を得た。これは、公然の秘密だったという。強制送還は、トルコやEUの法律および国際法のいずれにも違反する。
欧州の首脳は、国境を閉鎖することにやっきで、トルコが難民にとって安全な国ではなく、日に日に状況は悪化しているという明らかな事実を、見て見ぬ振りをしてきた。
調査でわかった大量のシリア難民の送還で、EU・トルコ協定が致命的な問題をはらんでいることが明らかになった。冷徹な計算と国際法への無頓着な姿勢のなせる技である。
トルコが安全な国だという前提のもとに結ばれた協定で、ギリシャにやっとの思いで辿り着いたシリア難民をその場でトルコに送り返すことが可能になる。EUの担当者は、帰還が4月4日から始まるだろうと期待する。
協定に先立ち、EUがトルコに過剰な期待を寄せていたことが、トルコのシリア難民に対する対応に最悪の影響を与えている。トルコの難民保護を改善させるのではなく、まったく逆の対応をとらせてしまうことになった。
この7〜9週間で、トルコは数千人のシリア難民を帰国させた可能性が極めて高い。協定がそのまま履行されれば、EUがトルコに送り返す難民が同じ目にあう危険性がある。送還されたシリア人には、子どもや妊婦もいた。
今回の調査で明らかになった送還例には、子ども3人に親の付き添いがなかったり、妊娠8カ月の女性がいたりした。
あまりに大規模で非人道的な強制送還である。
送還された人びとの多くは登録難民ではなかったようだが、登録難民でも証明書類を持っていなかったために送還されたケースをアムネスティは確認している。
アムネスティ国際ニュース
2016年4月1日
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